桔梗の透かし彫 2

先日、実際に使われている建具の鏡板の透かし彫を見せてもらいました。サクラと杉でしたが、エッジが立ってすっきりした仕上がりでした。振り返って自分の桔梗のそれは、残念な仕上がりかなあと思って、あらためてチェックしました。まず大きさが全然違っていて、たとえば私の桔梗の花弁の境は、太い所でも1.5ミリほどしかありません。だからまあこれはこれでと納得しておきます。お施主さんは、別にフィルターをかけなくてもちゃんと桔梗に見えるとおっしゃって頂いていますしね。ただ、やはりもう少し上手になりたい。

桔梗の透かし彫。直径36ミリ程。

桔梗の透かし彫。直径36ミリ程。

ただ、このままではいかにも脆く実用的ではないので、神代タモで裏打ちしておきました。なぜ神代かというと、同じチェリーでは面白くないし、手持ちの材で色物というと、ローズ、黒檀、ブビンガ、ウォールナットなどになります。神代が、一番桔梗とイメージがあうような気がしたからです。

組紐用の作業台

組紐用の作業台

桔梗の透かし彫

頂いた仕事(組紐用の作業台)で、なんでもどこでもいいから桔梗を入れて欲しいと依頼される。象嵌、レリーフ、ステンシルなど考えられるが、結局当たり前に小さな透かし彫を抽斗の前板に入れることにする。あまり大きいのもいやらしいので、直径36ミリ程度と考えた。上手な人ならミシン鋸で簡単に抜いてしまうのだろうけど、持っているおもちゃのようなミシン鋸、手挽きの糸鋸、いずれも失敗。結局扱い慣れた鑿と小刀でなんとか形になる。それでも3回目、目切れ部分を壊さないように和紙で裏打ちしてようやく形になった。あらためてこうしてデジカメで撮ってみると歪んでいるしガタガタだし・・・。それらしく作ってもらえれば、自分の中では強烈なフィルターが働いて、たいては桔梗に見えるとか言ってもらっているのですが、さらに細かい修正と仕上げを1本だけ手元にある篆刻刀で行おうかと思案中。

前にも書きましたが、やはり自分は器用ではなかったとまた納得させられます。

kikyou

チェリーに桔梗を彫る

刳り物

5月になるとあることを始めるため、モラトリアムも残りわずか。ニカワ、漆、ともうひとつやっているのは刳り物。刳り物のキモは刃物かなと考えています。サンドペーパーなどで安易に削ったりすると、冬目が立って凹凸が生じます。これにたとえば拭漆などを施すとこの凹凸が強調されて、だらしのない締りのない仕上がりになります。アマチュアの人の作品によくあります。

あと、下掘りだからと機械を使うと、私の場合は何かしら力のない勢いのようなものがない形になるような気がします。最初、すくい鑿で叩いて、四方反り鉋と彫刻刀で形を整えます。最後に大きめの四方反りの刃を抜いてスクレッパー代わりにして傷を消すように仕上げます。その上でサンドペーパーで木地を整えるようにします。

こういうことをやりだすと、私は際限なくダラダラと続けてしまうのですが、今は犬がいるおかげで歯止めになっています。

「イシナラ」と呼ばれる固いナラをゴリゴリやっています

「イシナラ」と呼ばれる固いナラをゴリゴリやっています

 

マンガ描きも、木工屋の技能のひとつだと思う

先週の大雪で延期してもらった納品に明日伺います。チェリーのテレビボードです。

チェリーのテレビボード

チェリーのテレビボード

抽斗には、DVDとCDを収納。全開き。

抽斗には、DVDとCDを収納。全開き。

 

そろそろ四角四面の作りから抜け出したいと思いつつ、いざとなるとこうなります。まあ、これは昨年のうちにお施主さんと打ち合わせて、大きさ・仕様とだいたいの形を決めていたので、そのイメージ通りなんですけどね。色々事前にお話を聞いて、最初に描いたラフスケッチ(業界ではマンガと呼んでいます)を参考までに見てもらいます。もちろん、正式に発注をしてもらった段階でちゃんとしたCAD図面も描くのですが、一般のお客さんの場合、CADの三面図よりもこうしたマンガの方が分かりやすいようです。色々な要望や、仕様変更も最初のマンガを元にして最後までそれで通す事が多いように思います。

drawing2

ちなみに下のものは、水組のウォールナットセンターテーブルの最初のスケッチです。これも、だいたいそのまま形になりました。

drawing1

ウォールナット・チェリーのセンターテーブル

ウォールナット・チェリーのセンターテーブル

こうしたスケッチは、小学校の図画の授業を受けていれば、多少の巧拙はあっても誰でも描くことができるものだと思っていました。でも、お客さんに絵を描いてもらうとかえってイメージが混乱することがあります。頭の中にあるイメージと書かれる絵に全く関連がない、縦横高さの比率も滅茶苦茶、要するに絵になっていないわけです。ですから、お客さんが家具にしろ木工品にしろ、なにかご自分のイメージとかプランをすでにお持ちの場合、それを言葉で聞いてこちらでそれを絵にするのが一番確実で手っ取り早い。描いているうちにお客さんが覗いて、あ!そうそう、そういう感じ!とか言って喜んでもらうと、それだけで仕事が半分終わったような気になります。

こうしたスケッチ描きも、多少は適性もあるでしょうが、仕事の中で培われる別注家具屋の能力のひとつだと思っています。

オイル塗装

小卓(センターテーブル)の塗装2回目。私は、特に指定のない限り家庭用の家具・木工品の塗装はドイツ・クライデツァイト社のオイルを使っています。下塗りにベーシッククリアオイル、仕上げにグロスクリアオイルというものを使い、途中サンディングを挟んで最低3回塗り重ねます。ドイツの非石油系の自然塗料というと他にアウロリボスの2社のものがあります。安全性とか信頼性という面では、この3社に関しては大きな差はないように思います。主成分は3社ともアマニ油ですが、硬化剤の成分などに違いがあるようです。アウロとリボスは、ともに柑橘類の成分のようなものを配合しているようです。特有の匂いがあります。硬化するとその匂いは消えるのですが、作業中・乾燥中のその匂いが気になります。私は長らくアウロ社のオイルを使っていましたが、その匂いが次第に文字通り鼻につくようになってやめました。クライデツァイト社のものは、硬化剤にテレピン(松脂)系のものを使っているようです。テレピンの匂いは、美術室のそれを思い出して嫌いでないし、オイル自体の粘度が他の2社より低く、扱いやすいことも気に入っている理由です。強度とか撥水性という意味では、いずれもそれなりに、としか言えません。ウレタン塗装とか拭漆とは比ぶべくもないと割り切るしかありません。

仕事と考えると、この程度のオイル塗装だけで、時間を潰すわけにはいきません。並行して、次の仕事の木取りをしていますが、拭き取りが前提のオイル塗装の場合、ウレタン塗装のように埃にシビアでないのも、我々小規模木工所向きと言えます。

ウォールナット+チェリーのテーブルににオイル塗装を施す

ウォールナット+チェリーのテーブルににオイル塗装を施す

水組 その2

組んでみました。今作っている小卓の端ばめと脚になります。これくらいなら、「水」の字と言ってもこじつけがましくないかな。

水組

水組

これが小卓のパーツです。

サイドテーブルのパーツ

サイドテーブルのパーツ

水組という組手を使った仕事をしています

今やっている仕事では、水組という組手を使っています。下の画像は、去年試しに組んでみたものです。実は、この組手どうやって組むのか図録や写真で見ても分かりませんでした。それで試しにやってみたのです。水組の呼称は、組手を角を視線の中心に見ると漢字の「水」の字に見えるという所から来ているそうです。

サンプルで作った水組

サンプルで作った水組

水組を使って見ようと思ったのは、意匠的な面もあってのことですが、サンプルを作ってみて分かったのですが、強度という面でも優れた点があります。具体的には、通常のたとえば7枚組よりも建築で言う降伏ヒンジという側面で大きな利点があるように思いますが、それは別の機会にします。

ホゾの部分は、治具を作って丸鋸盤で切りましたが、後の作業はひたすら鑿などの道具を使った手作業になります。手作業と言っても鉋かけのように全身を使ったものではありません。それでも続けていると身体がほてってきます。一見、動かしているのは腕だけのように思えますが、実はよく言われる腰をいれた状態で全身の筋肉を適度に使っているのかもしれません。

刻み終えた水組の部材

刻み終えた水組の部材

ちなみに、この組手は下のように互いに45°の状態を保ったまま角からずらすように組んでいきます。まあ、実際にやってみないと分かりづらいと思います。

水組の組み方

水組の組み方

暫くは無垢板で、楽しく仕事が出来そうです

年末は、集成材やMDFを使った仕事が続きました。これから暫くは無垢板を使った仕事になります。また3月のはじめには大阪でNPO法人・まどりさん主催の木工展へ出展します。1月、2月は相応に楽しく忙しく仕事が出来そうです。

ウォールナットのセンターテーブルの天板に予定している材です。年末にあらかた平面を出しておきました。いわゆる国内挽きのもので、ミミを落として幅は480ミリほどあります。根玉から挽いたもののようで少し硬そうですが、さすがは国内挽きというかシラタの幅も揃っており、ひどいネジレや歪みもありません。この程度の板ならば、手鉋だけで平面出しは可能です。きちんと台下端の調整の出来た台鉋で、妙な力を加えずに、削っていきます。そうすると自然と板の凸部分だけが削れていきます。そうして板全体に鉋を送って行くと次第に平面が作られていきます。削り残しというか、全く鉋の刃が当たらない部分もある、むしろ最初の頃は削れる部分のほうが少ないくらいですが、あせってはいけません。そもそも凹んでいる部分は、他の部分より低いから刃が当たらなくて当然なわけです。他の高い部分が次第に削れて、同じ高さになって、つまり平面になって初めて刃が当たるようになるのです。それを無理に力を加えて、削れるようしても材も鉋台も歪みを増すだけです。捻れに関しても、ある程度以上(出来ればいわゆる寸六であれば十分です)の幅の台鉋で、下端が相応に調整出来ていれば、順に送って削っていけば修正出来ます。本当に台鉋というのはよく出来た道具だと思います。

元の板の状態、ミミを落とす

元の板の状態、ミミを落とす

nut2

少しづつ平鉋で平面を出す

nut3

年末はこの状態で、プレーナーで厚みを出す。

nut4

正月休みで1週間ほど置いて、再度平面を修正。

私もそうなんですが、鉋(台鉋)というのは、本来平滑な面を作るための道具という事を忘れて仕上げの道具のように考えがちです。たしかにそうした面はあります。ただし、基本は平面を出すための道具です。自動鉋盤で厚み出しをした材に鉋をかけるのも、仕上げではなくて鉋盤で削って生じた微細な凹凸を削って直すと考えたほうが良いと思います。