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留隠蟻組・座卓の製作

年度末に数物留隠蟻組(とめかくしありぐみ)の仕事をさせてもらってから、3件の仕事を立て続けに頂いた。前から思っていたのだが、良い機会だしその製作についてまとめてみたい。千葉県のYさんの御依頼による座卓(幅・1800×奥行き・600〜700×高さ・330ミリ)、タモの耳付一枚板をの字に折り曲げた形のものを例にあげさせてもらう。

平面・厚み出し

材料は、長さ・2700ミリ、幅・600〜740ミリ、厚み・66ミリのタモ。柔らかくいわゆる(しょう)の良い材だ。後に述べるような理由もあって、手鉋で平面・厚み出しを行う。

横削り

まずは木表を横削りで平面を出す。たいていは凹状になっているので木端部分から削れていく。

歪みチェック

大型の下端定規で平面を歪みをチェックしながら削っていく。

厚みだしのケビキ筋

あらかた平面が出たら、ケビキで厚み出しのための筋をひく。

裏も削る

ケビキの筋に従って木裏を削る。木裏は凸面になっている場合が多く、中央部分から削れていく。厚み出しが終れば、再度木表の平面をチェックする。こうして相当部分を削っていくと、板のもともと内部応力が崩れ、大なり小なり歪み、反りが生じる。ただし、手鉋でじっくりと削っていくと、その過程で生じた歪みを修正していくことになる。したがって、機械で一気に行う場合よりも加工後の安定性が良い。

刻み

ルーターで下堀り

電動のハンドルーターで下穴を掘る。どこまでルーターで掘るかは、時と場合によって変えれば良い。とりあえず穴の深さだけでも機械で決められるのはありがたい。

平鑿で仕上げ

平鑿で仕上げ2

導付部分の仕上げ・修正は平待(ひらまち)三枚裏の追入鑿を使う。

鎬鑿で仕上げ

鎬型の突き鑿(木型鑿)で、角の部分を仕上げる。組んでしまうと見えない部分だが、このあたりをキチンとする事で最終的にきれいに組上がる。

際鉋での留削り

際鉋での留削り2

耳付き板の場合、木端の留部分はこの組手の要点の一つ。際鉋で慎重に仕上げる。

組み立て

組み立て1

組み立て2

仮り組みは、こうした一品ものの場合、上の画像の程度に組手の当たりと固さをチェックする程度にする。何度も仮り組みを繰り返してチョコチョコ修正をしていると、肝心の留部分などがダレてきて、ダラシのない仕上がりになる。よくあるアマチュアのひとの作品が、どこと言って文句のつけようがないのだが、なにかしら締まりがなく勢いのようなものが感じられないのは、そのせいではないかと思っている。

組上がった座卓

組み終ったら、木端の部分を仕上げる。表を再度鉋かけをして、ペーパーをかける。もちろん電動のサンダーを使わずに、ホルダーに挟んだペーパーを木理に沿ってかける。

横削り

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以下は、補足のため2009年3月28日に工房日誌に掲載した記事を転載します。この仕口の工作に必要ないくつかの道具の紹介があります。

3月28日(土)    留隠蟻組(とめかくしありぐみ)

外注の仕事。クルミの矧板(はぎいた)の座卓。天板と脚を留隠蟻組で接合する。要するに少し前までよく作った栗文机のような構造。

お役所仕事で、急に納期が年度末の3月31日までと指定されたらしい。10日間でこれを6台納めなくてはならないが、なんとかなった。400幅の板を組むには少し組手が粗いが納期的に仕方がない。これでも強度的には大丈夫だし、ビスケットにウレタンボンドといった今風のインチキ接合よりは遥かにましだと思う。

隠蟻組

隠蟻組2

厚み出しと寸法切りの後、ハンドルーターで組手の下穴を掘る。あとは下の画像のような手道具で仕上げる。少し手を加えてあるが、何も特別な道具ではない。

隠蟻組に使う道具

左の3本の鑿は鎬鑿(しのぎのみ)、うち一番左は突き鑿(木型鑿ともいわれる)。右の2本は、蟻勾配に合わせて刃先の角度をつけてある。当然、左右一対が必要となる。

隠蟻組に使う鑿

この組手の壷ともいえる表面2分(6ミリ)ほどの留(45°)の部分は、この鉋で削る。以前は色々な治具を使っていたが今はこれですべて済ます。

隠蟻組に使う鉋 隠蟻組に使う鉋2

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