拭漆1 柿渋下地

クリの薄板(6ミリ厚)、420✕360ミリが16枚。框で組む棚の側板になる。仕上げは拭漆とするが、その下地として柿渋を塗る。木地固めというより吸い込み止めになる。この16枚の板の裏表で表面積は4.8平米(平方メートル)となる。三六合板3枚分だ。これを、クリのように中程度の密度の散孔材に、テレピン油で2倍ほどに希釈した生漆を塗布するとしても500gでは足りないだろう。漆を充分に染み込ませて木地を固めるのが、本来のやり方かもしれないが、いかにももったいない。経済的にという意味ももちろんあるが、貴重な漆の使い方としてもどうかと最近は考えている。この点については、あとで触れたい。

クリの薄板に柿渋を塗布する。

クリの薄板に柿渋を塗布する。

それに、渋自体も、完全に硬化すると撥水性、防腐性を伴った強固な塗膜を作る。その意味では、同じ自然塗料として漆にも負けていないと思う。他に、漆の下地として膠と砥粉を使った半田地、ウレタンなどの化学塗料を使ったものがあるようだ。仏壇などは、後者が今は主流になっているらしい。私も一度だけ、ウレタンのサンディング・シーラーで下地を作って拭漆をしたことがあったが、塗膜が強すぎて漆が染み込まず、拭漆の良さがなくなってしまうと思った。塗りの下地としては良いのかもしれない。