拭漆2 錆着け

木地固めが終わると、導管の大きな環孔材の場合は、それを埋めるために錆着けをします。錆(漆錆)というのは、固く練った砥粉にそれとほぼ同量の生漆を混ぜて、またよく練って作ります。それを、画像のようにヘラをつかって導管に摺りこむようにして着けていきます。小さなものになら、ボロを丸めたタンポで擦り込めばよいでしょうが、ある程度の大きさのあるものは、ヘラを使ったほうが良いと思います。その理由は下に書きます。

2寸のヘラを使っての錆着け

2寸のヘラを使っての錆着け

漆というのは、乾燥(硬化)の難しい素材で、それがかぶれの問題と並んで使用をためらわせる理由になっています。しかし、この漆錆の場合は、練った砥粉の水分と反応するためか、刷り込んでいる最中から、どんどん粘度が上がってきます。タンポでゆっくり刷り込んでいると、はじめに施した部分が硬化していきます。材の表面に不必要に残った部分や、むらになった部分をあらためて拭き取ろうとすると、かなり力を入れないときれいになりません。それに摺り込むタンポがはやく固まってしまい、その都度交換する事になり漆をその分無駄にしてしまいます。

ですから、材に合った比較的大きなヘラを使って、さっと摺り込むと作業としては楽で、合理的です。一度、ある塗師の人の錆付け作業を見学させてもらった事があるのですが、素早く力強く、グイグイ摺りこむ感じで、それでムラなくはみ出しもごくわずかで、それもさっと修正しながら仕上げてしまいます。錆付けは、本堅地を含め塗りの下地作りの基本作業になるので、これくらいの速度と効率でやれて当たり前という事なんでしょう。そういう塗師の人のマネはとても出来ないにしても、この作業はヘラを使うべきだと思います。

錆着け1回目の終わったクリ板。

錆着け1回目の終わったクリ板。

完全に導管を埋めるには、この状態で出来れば2〜3日置いて錆の痩せを見て、さらに錆を重ねます。2回行うとかなり良い感じで埋まります。塗装の強度や汚れの付着しにくさとかを考えると2回くらいはやった方が良いかもしれませんが、導管の凹みをある程度残した方が木目が映えて良いという選択もあります。このあたりは、使う材や用途、それに使う人の感覚によってそれぞれだと思います。