「新型コロナウイルス肺炎」と呼ぼう

WHOは、2月11日今全世界に蔓延しているウイルス性肺炎をCOVID-19( CoronaVirus Desease 2019 コビット19)と名付けました。ウイルス自体はSARS-Cov-2(サーズコロナウイルス-2) となります。

このCOVID-19というWHOによる命名はよく考えられていると思います。チャイナウイルスとか武漢肺炎とか発生地とされている地域や国名を冠した呼称を使う品性下劣な政治家が内外にいました。疾病や事故・事件などに地名を絡める無神経がいかに多くの差別や偏見を生み出してきたことか。四日市に生まれ育った私は身をもって経験してきました。出身を話すと、いまだに喘息は大丈夫かとか体はどうかと聞かれます。今、そしてこれからこうした差別に最もさらされているのは福島県在住・出身者です。リベラルを気取る無神経で無分別な人たちはわざわざカタカナにしたフクシマという言葉を好んで使っています。その品性はドナルド・トランプや麻生太郎と同じですが、この点はまたあらためます。ひとつだけ、私は東京電力福島第一原子力発電所事故、略する場合は東電原発事故と呼んでいます。フクシマという言葉は事故の責任主体を曖昧にして何かしら放射能汚染を地域の風土病のように思わせる差別を助長しています。

もうひとつ、このCOVID-19( CoronaVirus Desease 2019 )という名称がよく考えられていると思うのは、”disease”(疾病)として、” infection”とか”infectious disease”(感染症)ということばを使っていないことです。WHOによるCOVID-19( CoronaVirus Desease 2019 )という名称については、国内の役所や報道機関などでも様々な訳で表現されています。

  • 新型コロナウイルス感染症 厚労省、日本医師会、東京都、大阪府、三重県ほか
  • 新型コロナウイルス関連肺炎 日本薬剤師会、JALほか
  • 新型コロナウイルスによる肺炎 朝日新聞
  • 新型コロナウイルス(新型肺炎) 毎日新聞
  • 新型コロナ(ウイルス) 読売新聞、中日新聞
  • 新型コロナウイルスに関連した肺炎 奈良県他自治体

この疾病の呼び名で肝要な点は、感染という語句を使うか否かにあります。WHOが、あえて”infection”(感染)という文字を外して命名した意図をどう汲み取るかということでしょう。地名や動物の名前(とかトリとか)がそこに住む人やたずさわる人への差別や偏見、不利益を生み出す。感染という言葉も同じで、感染してしまった人やその治療にたずさわる人にも同じ目が向けられます。今回の新型コロナウイルス肺炎に関してもすでに差別事件があちこちで起こっています。

それでもこの肺炎の拡大前や初期の段階では、その感染拡大を恐れさせ防ぐためにあえて感染症というWHOによる命名にない言葉を使うことにも意味があったかもしれません。しかし、もうその時期は過ぎました。それにサカリのついた若者はやはり町に出ていましたし、タダ酒の旨みを覚えたオヤジたちは夜の街に繰り出していた。残念ながら社会に一定数の割合で存在するこうした人ばかりにかまっていられない。これからは、社会をあげて治療に取り組む医療関係者を応援して少しでも働きやすい環境を作ることが肝要になります。逆にその医療従事者の頭を後ろから殴るようなまねをさせないためにも、誤解と差別を生み出しかねない感染とか感染症といった言葉の使用は避けるべきだと思います。