以前の職場

大阪南港の中田木材工業に、買ったまま預かってもらっていた材木を引き取りに行く。何年か前に倒産した北海道のE林業の在庫品で、今頃はもうなかなか見られないような良質のクルミ材だ。2年以上も前に買って、昨年ある店舗の什器と内装用に使って残りはそのまま預かってもらっていた。この業界はそうした面でおおらかなところがあって、ずぼらな性格の私には助かる。

以前勤めていた会社が、南港にほど近く道中少し道をそれた所にある。昼一番の約束に多少時間があったので寄ってみる。スケールと呼ばれた酸化鉄によって赤茶けた門やスレート拭きの建屋の姿はどこにもなく、大きく小ぎれいな物流倉庫のようなものになっていた。私は、別にその会社に何の思い入れもないがその変貌振りに少し驚く。それに一応製鋼から圧延、それに出荷のためのストックヤードと加工施設のあった製造業の現場がこんな無機的で大きな集配場のようなものになったのを見るのはやはり寂しい。

それと、私が辞めてからこの会社ではいずれも製鋼の炉前で2件の労災事故があり、それぞれいずれも20代の若い社員が亡くなっている。私が辞めるときには、もう会社はその将来は展望出来ない状態であった。それで結局こうなるのであれば、もう少し早く少なくとも旧式の炉で若い現場労働者をむごたらしく死なせる前に稼働を停止するすべはなかったのかと改めて思った。たしかに小さな会社といっても下請け含めて300人の雇用を、どこかに軟着陸させるのはたいへんなことであったろう。だが、そんなことは人一人の命に代えられるものではないと今なら言うことが出来る。私自身が、この会社では労災でかなりひどい怪我をしている。運良くこの通り生きているし、後遺障害も残っていないが、その意味で他人事ではなかった。

旧国光製鋼跡

モーツアルトのピアノ協奏曲全集

今日は、仕事の打ち合わせでお邪魔したお宅でクララ・ハスキルのモーツアルトを、アルテックのA7、EMTのプレーヤーで聴かせてもらう。

誰だったかある高名な音楽評論家はオフレコでは、西洋音楽なんてバッハとモーツアルトだけあれば良い。あとはみなその亜流か出来損ない。と言い放っていると読んだか聞いたかした記憶がある。私もそう思う。それに我々日本人には美空ひばりの歌がある。

関係ないが、美術評論家の洲之内徹は、藤田(嗣治)の絵は戦争画しかない、あとはクズだよと言ったそうだ(司修・『戦争と美術』)。何年か前に藤田嗣治の戦争画が一般公開されたとき、これも本当にその通りだと思った。洲之内徹という人も前に書いた絶対にお金を出してその本を買いたくない人の一人で、その「気まぐれ美術館」は『芸術新潮』連載時にはもちろん立ち読みだし、後に何冊かの単行本になってからも図書館で借りて読んだ。この司修さんの著作は、毎年この季節になると読みたくなる。そして東京国立近代美術館の靉光(あいみつ)の大きな目玉の絵を、関根正二の『少年』などと一緒に見たくなる。この本の冒頭にはシャガールの「ホロコーストの犠牲になったユダヤ人画家たち展」のカタログへの献辞が引用してある。これを読むだけでも、この本を購入する意味があると思う。シャガールの絵にこびりつくどうしようもない禍々(まがまが)しさが少しは理解できる気になる。

フォルテピアノとピリオド楽器によるモーツアルトのピアノ協奏曲全集。2005〜2006年の新しい録音の11枚組で4,330円というもの。

フォルテピアノによるモーツアルト協奏曲全集

ヒバリ

今日のような梅雨の中休みの日は、いつもの朝の散歩の時にその鳴き声をたよりに空にヒバリの姿を探してみる。空が青すぎず眩しすぎないのも良い。私は仕事(木工)も、趣味(読書とかオーディオ工作)も、そしてこうしたパソコン作業も目を酷使するので、よいリハビリになる。それにしてもこのヒバリたちは、この物騒な河川敷近辺のどこに営巣しているのだろう。毎年変わらず現れるので代は重ねているはずだ。犬の散歩のコースだし、猫もカラスもいる。サツキやユキヤナギの植え込みがたくさんあるので、その根元の奥の方かとも考える。ヒバリの鳴き声というのは、なんだか気ぜわしくその甲高さが時に耳に触るようで好きではなかった。しかしこのあたりでもやたらと増えたムクのゲーゲーという汚い声よりははるかに心地良いと思うようになった。

木の家具40人展2011終了

13日に終わった木の家具40人展2011では、久しぶりに仕事仲間や古くからのお客さんにも会う事が出来ました。12日(土)、13日(日)には500人以上の来場があったようです。この名古屋 木工家ウイークというイベントもすでに4回目で、中心になって運営してくれている工房齋の齊田一幸さんの変わらぬ尽力によるものでしょう。おかげで我々のような小規模家具工房、木工所に対する社会的認知も少なからず上がっていると思います。齊田さんや他の実行委員の人に頭が下がります。

さて、事後になってしまいますが、私の出展した仕事について受けた質問や問い合わせの応えも兼ねてこのページで解説していきます。よろしければご覧下さい。↓

利休文机

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