ダイヤトーン・P-610 バスレフエンクロージャー

昨年、注文を頂いて納品したダイヤトーンP-610MB用のバスレフ型エンクロージャーです。お客様に送っていただいた画像を挙げさせてもらいます。今回はご要望により取り外し可のサランネット付属させています。

埼玉のTさんから。ダイヤトーンP-610MBバスレフエンクロージャー。

今回も容積・ダクト共振周波数などはメーカー指定(60リットルのもの)によりました。材料はフロントバッフルはマカバの白(1枚)、側及び天地はミズナラ、背板はキリの集成材です。もうこれでこのユニット用の箱を作るのは7ペア目ほどになります。作っているうちにどんどん材の厚み特に側のそれを薄くなっていきます。今回は10ミリにしました。加えて箱の中には吸音材などいっさい入れていません。お客さま(埼玉県のTさん)もその状態で聴いていただいているようです。

マカバ(白)のフロントバッフル。フレームの鳴きを抑えるために落とし込む。

側、天地はナラ。厚みは10ミリ。
組み方は遊んでみたくなる。

その点に関していろいろ屁理屈はあるのですが、要するに吸音と言っても、別に音(背面)を吸うわけではなくて、別のものに分散させて振動させているだけです。音(エネルギー)は吸われたりなくなるわけではありません。別の形に変換される(共振、分散させて最終的に熱に変える)だけです。これは物理学のイロハの問題です。それならばグラスウールやら合板やら変なものを鳴らすより、せっかくの無垢板を上手に鳴らしたほうが五感に心地よいだろうと思うのです。

そういえば以前、このエンクロージャーについてチリから注文を頂いたことがありました。たどたどしい英語でのメールのやり取りです。結局通関とか面倒くさそうなのでお断りしました。それならこちらで作らせるからと図面だけでも欲しいと言われましたが、概寸とメーカー指定箱のコピーだけにしてもらいました。ビクトル・ハラとかルイス・セプルベダとかの話題で盛り上がったので、すこし残念だったのですがね。

こうして自宅で暫く視聴・確認しています。上は今常用の北辰電機30センチ同軸+平面バッフル。

前にも書きましたが、自分用にこのユニットの箱を作ってオーディオ遊びを卒業しようと思うのですが、作りかけると注文を頂いてそれを回してしまう事を繰り返しています。それでももう肝心のフロントバッフル用の良材の手持ちがなくなってきました。ご検討されている方は早い目にお願いします。

ダイアトーン・Pー610バスレフ箱の制作

木の仕事展IN東海2016の出展用にダイアトーン・P-610のバスレフ箱を作っています。フロントバッフルには、チェリーを予定していましたが、思うような材がなく、カバに変更しました。これは、マカバの白の尺物(30センチ)という今や希少な材です。以前、ある仕事でバンドル買いした中の一枚で、とっておいたものです。こうしてバンドル買いした材の中で、幅広で木味のよいものは他にも選別して保管してきました。思うところあって、こうして取り置きした材料も、もう機会を見て使っていこうと思っています。

ユニットはバッフルに落とし込む事で、フレームのいやな鳴きを押さえる。

ユニットはバッフルに落とし込む事で、フレームのいやな鳴きを押さえる。

箱のまわり(エンクロージャー)はナラを使います。スピーカーの箱なんて、別に大きな負荷のかかるものでなし、時間もないのでビスケットで簡単に組んでしまってもよいかとチラッと思いました。もちろん、そんな事はしません。前にも書きましたが(剣留と導付鋸・「蛇足」)、あれをやるようになったら木工など辞めます。気軽な横着に流れる事で、失うものが大きすぎます。それと、導付鋸を使ってみたくなり、こんなことをやっています。

エンクロージャーは、ナラの10ミリ。

エンクロージャーは、ナラの10ミリ。

徳島からお客さん、ダイアトーン・P-610 を聴く

15日(月)は、わざわざ徳島からお客さん。ダイアトーン・P-610のスピーカーボックス(エンクロージャー)を引き取りに来てくださった。事前のメールでタローのご指名があったので、ふだん連れていかない工房へ繋いでおいた。私が席を外している時に、そのお客さんがお見えになって、私より先に友だちになっていた。聞けば、同じような雑種犬を飼っていて、ブログの写真を見て是非会いたかったとの事でご指名となった。携帯に収まったその飼い犬(コジローだったか? 失礼、小太郎でした!あら、コタローだ・・・)の写真は、本当にタローとよく似た日本の雑種という風情の元気そうなヤツだった。

ダイアトーン・P-610 バスレフエンクロージャー。チェリー、クリの全て無垢板。

ダイアトーン・P-610 バスレフエンクロージャー。チェリー、クリの全て無垢板。この小さなユニットが良く鳴る!無垢板のエンクロージャーは、内部にほとんど吸音材を入れていないが、いやな音で振るえない。

私のホームページを見て注文を頂いたのだが、実は色々とほとんどニアミスとも言えるような共通の知人・友人がいる私より少し年長の方だと分かって、よく云われる事だが世の中は狭い。その分、基本的なものの考え方もお互い窺い知れて肩肘張らずに話せる。飼っている犬が同じ雑種だというのも嬉しい。ペット(ある意味友だち)をブランドで選ばないし、生き物をお金で贖うことをしないということだ。やはり前日の選挙結果のことは、もうニュースも見る気がしないとのこと。

オーディオの事も、オカルトめいた機器自慢ではなくて、基本自作派なので話は合う。作らせてもらったものと、私の普段使いの平面バッフル300Bシングルで暫し音楽を聴く。持って来られたBBキングは、圧倒的にP-610の方が快適だ。ベースの音もちゃんと聞こえる。10年あまり親しんだこの平面バッフルだが、もう一度P-610を使ったスピーカーを自分用に作ろうと思った。

ダイアトーン P−610MB

四国にお住まいの方から、新しい仕事の依頼をいただきました。

こちらのスピーカーキャビネットです。

ダイアトーン P-610用バスレフキャビネット

ダイアトーン P-610用バスレフキャビネット

残念ながら、このダイアトーン・P-610というスピーカーユニットが、20年近く前の復刻版を最後に生産を終了しており、もう仕事として作ることもないと思っておりました。それでも一応ユニットを前面から落としこむ穴のための治具なども保管してあります。念の為お客さん自身がお持ちのユニットをペアで送ってもらいました。こちらは復刻版で、私が持っていたオリジナルのものとはエッジなど若干違うところがあるのですが、懐かしく、かつそれを通り越した新鮮さを感じます。

四国のお客さんから送っていただいたダイアトーン P610MB

四国のお客さんから送っていただいたダイアトーン P-610MB

年をとるのは嫌なことです。良いことなんてありません。いや、まんざら悪くもないとか言うのは、たいていは自分に対する言い訳か同じ世代同士のなぐさめ合いのどちらかだと思います。それでもひとつだけ、50も半ばを過ぎて良かったなと思うことがあります。それは、妙なハッタリやおかしなプライドとかから多少は自由になり、実質を楽しめるようになったことです。身の丈にあったとか言うと、なんだか卑屈な響きがありますが、つまらないことに拘泥するよりも、スマートに遊びたい。それは、残された時間は既に有限だということが、どこか意識の傍らにあるからかなと思ったりします。

このダイアトーンのユニットは昔から名機と言われてきたのですが、質実で付加価値を付けるためだけの装飾や過剰仕様を排した姿は爽快さすら感じさせます。郡山の工場で40年以上作りこまれてきた丁寧で確実な作りも良い。もう本当いうと10KHz以上の音なんて聞こえないのだし、50Hzなんて地鳴りのようなものは、そもそも音楽を聴くのに必要なかったのです。ああ、これからは、他のものはみんな処分してこれで美空ひばりや、ブラームスの歌曲や、バッハの無伴奏チェロ組曲やらを静かに聴きたいなとしみじみ思いました。