トチの古材 その1 削り出してみた

木の仕事展IN東海2013にトチの厨子を作って出展するつもりでいました。そのため手持ちのトチの端材や、古材を引っ張り出して、それに合わせて木取りや寸法を考えて頭を悩ませていました。結局、色々あって間に合わなかったのですが、その過程で一枚のトチの板を発掘しました。長さ・900ミリx幅・450ミリx厚み・27ミリほどの板で、両木口には本ざねと3本の釘で端ばめが打ち付けられていました。きれいな中杢の板ですが、それ以外とくに目立った特徴もなく素直そうな板で大きさも手頃なので、なにか自分用のものをいつか作れればと考えて保管してありました。

トチの古材、鉋で削り出した

鉋で削り出したトチの古材 GXR A12 50mm

 

この板は、実はまだ京都に住んでいた頃、大型ゴミとして捨てられていたのを拾ってきたものです。それから、おそらく30年近く、その間には京都で2回、大阪で3回引越しをして、結局いま四日市にいます。ずっとどこか陽の当たらないところに置いて、でも捨てることも出来ずに持ち続けてきたことになります。

さて、木味を確かめるために、端ばめを外して灰色にくすんだ木表に鉋をかけて見ました。木端に近いところから綺麗な細かい縮杢が出てきます。これは、と思って一通りめくってみると中央の板目の部分を除いて、ほぼ全面に細かい縮杢が出ています。目立った傷もありません。板目部分が、いわゆるタケノコで、残念ながら両木口からそれぞれタケノコが出て中央部分でくびれながら合わさる出会いではありません。あと板目・タケノコの根本あたる部分に微小な葉節がありますが、これは例えば拭漆で仕上げればまったく問題ありません。総じて、私がこれまで扱った板の中で一番上品で、味の良い板のひとつだと思います。もちろん、これまでも様々な杢と呼ばれる板を使ってきましたが、私はそもそも板目のグネグネした板が好きではありません。加えて、目玉おやじが集会をしているような、大阪のオバちゃん定番のヒョウ柄のような、または雷様の腰巻のような縞々模様は、よほど上手に使わないと下品な成金趣味に堕するように思います。

トチの古材、縮杢

トチの古材 縮杢 GXR A12 50mm

 

トチにしては全体に赤い。トチの場合は偽心材と呼ばれる赤身が嫌われ、辺材の白い部分のみからなる板が好まれます。それにトチというのは心材(赤身)の部分の少ない樹種だと認識しています。また山のトチノキを見ても、丸太や板にされた物を見ても、トチは比較的ウロの入りやすい、通直な材の取れにくい樹のように思います。他にも入皮や腐れ、アオという変色などの傷が多い材です。まさか赤身だけでこんな素直な材がとれるのでしょうか?あるいは全く別の樹種かもしれません。もし、どなたかこの記事をご覧のかたで、見識をお持ちなら教えてくださると嬉しいです。しかし、板にされてからも少なくとも30年、枯れた材は実に気持ちよく鉋にかかりますが、その感触はトチそのものです。

これは、とりあえず慎重にまず木作りをし直さなくてはと考え、木表の反りとねじれを取りました。その上でプレーナーで厚みだし。途中応力が変わって再び反り・ネジレが出ます。それを木表から鉋で直すこと3度、一旦それなりにきちんとした平面と厚みの揃った板になりました。結果は、仕上がりで厚み22ミリ。5ミリ分がムラ(ねじれ)取りと厚み出しで消えたことになります。それと元からあって蟻桟用の溝が4ミリから5ミリほど残りました。この板を使って、文机か座卓を作りことは決めているのですが、どういう形とするか?二つの案で悩んでいますが、養生を施して暫く頭を冷やしてよく考えることにしました。

続きます