乾漆をやってみる 2 なんとか型を抜いたぞ

糊漆で、麻布を貼り重ねること5枚になり型を抜くことにしました。生漆で生地とくに切りそろえたヘリ(エッジ)の部分を固めて1日置きました。型の木を湿らすくらいでは無理なので、バケツに水をいれて、その中に半日浸しておきました。 なんとかヘリから続飯が溶け出したので、そこに油絵用のペインティングナイフを差し込んで、少し剥がれたらまた水に浸してを繰り返し、最後は力技で・・・。

無理から剥ぎとったが、なんとか形は保っている

無理から剥ぎとったが、なんとか形は保っている

なんとか抜けましたし、形もそれなりに保っていますが、型との接着面は和紙がこびり付いていたり、逆にその上の麻布が剥がれてしまっていたりで、ひどいことになっています。あとエッジの部分から肝心の麻が剥がれて分離しています。これはこれで、なんとか実用上使える形にまで補修してみるか、題材として教訓化するためにこのまま残しておくか悩んでみます。

内側はひどい状態になってしまった

内側はひどい状態になってしまった

乾漆をやってみる 1

脱活乾漆というものをやっています。これはある型に糊漆を使って麻布などを貼り重ねていき、固まったところでその型を抜くという技法です。古くから仏像などもこの技法で作られています。人に聞いたり、ネットで情報集めたり、でも基本は我流になります。

今は、普通に小さな器などは発泡スチロールなどで型を作って、固まればそれを壊して抜くというやり方が多いようです。型を作るのも抜くのも簡単で、コストも手間も省けるという意味では合理的で、鋳物の木型も今はそうして作られているようです。でも、木工屋としては、どうも納得しかねるところもあるので、木で型を作ってみました。昨年末に下請け仕事で使ったメルクシパインの集成材の端材がたくさんあるので、それを使います。材は密だし柔らかく彫りやすいのではと思ったのですが、意外に粘っこく刃物のかかりが悪くやりにくかったです。

その型に、続飯(そくい・米粉を練った糊)でまず和紙を貼ります。後で漆が固まった時に水に浸して型を抜くためですが、漆屋はじめ何人かは抜けないのじゃないかとの事でしたが、まあやってみます。

木の型に続飯で和紙を貼る

木の型に続飯で和紙を貼る

その和紙の上から、麻布に糊漆をヘラで練りこんだものを貼っていきます。シワや糊溜り、空気の層が出来ないように手で抑えつけるように型になじませ、ヘリで折り返すようにします。貼っているうちに糊漆の粘度が高くなるので特にタッカーなど打たなくても止まります。逆にこの季節、糊漆の乾燥が速く素早く行う必要があります。乾くのを待って、同様に貼り重ねていきます。下の写真は麻布3枚目を貼り終わった状態です。1日2回でもやれそうですが、あわてないことにします。

糊漆で麻布を貼り重ねる

糊漆で麻布を貼り重ねる

色漆を使ってみた

漆定盤を使った試作というか遊びが一応形になりました。

布着せも色漆も初めての試みだったのですが、このように木口の処理に使うことで、仕事の可能性が広がりそうです。次は、乾漆のまねごとをやります。

拭漆の器の木口に布着せをして色漆

拭漆の器の木口に布着せをして色漆

漆定盤使っています

先日作った漆定盤(→「山に樹を見に行く3 ミズメ」)、さっそく使っています。素材はここで紹介したナラの刳り物です。

米粉を炊いて練った続飯(そくい)に生漆を混ぜて糊漆を作る

糊漆を作る

糊漆を作る

糊漆で木口に寒冷紗を貼る(布着せ)

布着せ

布着せ

漆錆を付ける(錆付け)

錆付け

錆付け

これを研いで生漆で固める(錆固め)

錆固め

錆固め

色漆(黒)を塗ってみた。下地の荒れがモロに出るのは、ウレタンなどと一緒だと納得。写真が悪くよく分からず申し訳ありません。

色漆を塗ってみた

色漆を塗ってみた

 

「山」に樹を見に行く 3 ミズメ

ミズメについては、以前に書きました(→ミズメ)。本当にサクラによく似ていますが、分類上は科から違っています。

ミズメ

ミズメ GXR A12 50mm

樹皮もサクラにそっくりです。縦に入った傷は獣の爪研ぎの跡かなあ。

ミズメの樹皮

ミズメの樹皮 GXR A12 50mm

そのミズメを使って仕事をしました。訓練校の実習以来、さんざんやった上端留(うわばとめ)五枚組接ぎというものです。 こういう仕事にはカバの類のように粘りがあって固い材が刻みやすいのです。 中でもミズメはその質や見ためもヤマザクラに近い良材です。

上端留五枚組接ぎ

上端留五枚組接ぎ

これで何を作っているかというと、8ミリ厚、800×600のガラスを落としこんで漆定盤にします。自分用です。座り作業用に短い足を付けようとも思いましたが、今後の使い勝手も考えて天板だけにしました。これならテーブルに置いても使えます。この上で漆をヘラでねったり混ぜたり、あるいは漆錆や糊漆・麦漆を練ったりします。前から欲しかったのですが、ようやく作る事が出来ました。

ミズメの枠に8ミリ厚のガラスを落とし込んだ漆定盤

ミズメの枠に8ミリ厚のガラスを落とし込んだ漆定盤

漆定盤細部

漆定盤細部

桔梗の透かし彫 2

先日、実際に使われている建具の鏡板の透かし彫を見せてもらいました。サクラと杉でしたが、エッジが立ってすっきりした仕上がりでした。振り返って自分の桔梗のそれは、残念な仕上がりかなあと思って、あらためてチェックしました。まず大きさが全然違っていて、たとえば私の桔梗の花弁の境は、太い所でも1.5ミリほどしかありません。だからまあこれはこれでと納得しておきます。お施主さんは、別にフィルターをかけなくてもちゃんと桔梗に見えるとおっしゃって頂いていますしね。ただ、やはりもう少し上手になりたい。

桔梗の透かし彫。直径36ミリ程。

桔梗の透かし彫。直径36ミリ程。

ただ、このままではいかにも脆く実用的ではないので、神代タモで裏打ちしておきました。なぜ神代かというと、同じチェリーでは面白くないし、手持ちの材で色物というと、ローズ、黒檀、ブビンガ、ウォールナットなどになります。神代が、一番桔梗とイメージがあうような気がしたからです。

組紐用の作業台

組紐用の作業台

桔梗の透かし彫

頂いた仕事(組紐用の作業台)で、なんでもどこでもいいから桔梗を入れて欲しいと依頼される。象嵌、レリーフ、ステンシルなど考えられるが、結局当たり前に小さな透かし彫を抽斗の前板に入れることにする。あまり大きいのもいやらしいので、直径36ミリ程度と考えた。上手な人ならミシン鋸で簡単に抜いてしまうのだろうけど、持っているおもちゃのようなミシン鋸、手挽きの糸鋸、いずれも失敗。結局扱い慣れた鑿と小刀でなんとか形になる。それでも3回目、目切れ部分を壊さないように和紙で裏打ちしてようやく形になった。あらためてこうしてデジカメで撮ってみると歪んでいるしガタガタだし・・・。それらしく作ってもらえれば、自分の中では強烈なフィルターが働いて、たいては桔梗に見えるとか言ってもらっているのですが、さらに細かい修正と仕上げを1本だけ手元にある篆刻刀で行おうかと思案中。

前にも書きましたが、やはり自分は器用ではなかったとまた納得させられます。

kikyou

チェリーに桔梗を彫る

刳り物

5月になるとあることを始めるため、モラトリアムも残りわずか。ニカワ、漆、ともうひとつやっているのは刳り物。刳り物のキモは刃物かなと考えています。サンドペーパーなどで安易に削ったりすると、冬目が立って凹凸が生じます。これにたとえば拭漆などを施すとこの凹凸が強調されて、だらしのない締りのない仕上がりになります。アマチュアの人の作品によくあります。

あと、下掘りだからと機械を使うと、私の場合は何かしら力のない勢いのようなものがない形になるような気がします。最初、すくい鑿で叩いて、四方反り鉋と彫刻刀で形を整えます。最後に大きめの四方反りの刃を抜いてスクレッパー代わりにして傷を消すように仕上げます。その上でサンドペーパーで木地を整えるようにします。

こういうことをやりだすと、私は際限なくダラダラと続けてしまうのですが、今は犬がいるおかげで歯止めになっています。

「イシナラ」と呼ばれる固いナラをゴリゴリやっています

「イシナラ」と呼ばれる固いナラをゴリゴリやっています