吉野に行ってきました 2

喜佐谷の集落を抜ける

遭遇した小学生の一団の中の女の子4〜5人が、歩きながら歌をうたっています。

はじめて見る山 はじめて見る川 はじめて歩く道
ジャンバラホイ ジャンバラホイ ジャンバラホイホイホイ

これを飽きることなく延々繰り返します。途中思い出したように、たまに今日から友だち 明日も友だち ずっと友だちさというフレーズが挿入されます。帰ってから調べたら、元歌(『キャンプだホイ!』)と少し歌詞が違います。でも元のはじめて泳ぐ海なんて、ここには海なんかどこにもないのだから、はじめて歩く道の方がずっと自然でいい。子供たちがアドリブで適当に替えて歌っているとしたら、すばらしいなと思います。それと、合いの手のようなジャンバラホイというのはなんだろう。何かのオノマトペかそれとも適当な語呂合わせか、聞いてみたかったけど我慢して、でも並んで歩いている間、小さな声で一緒に歌っていました。

宮滝バス停から吉野川を渡る

宮滝バス停から吉野川を渡る。遭遇した小学生の先頭集団。後ろにパラパラ続いています。

私たちが子供の頃は、こうした遠足では2列縦隊くらいに並ばされて、無駄口をきくなとか言われて黙々と歩かされていたように思います。運動会の入場行進の練習とか始業式やら卒業式なんかの整列とかの練習も含めて軍事教練そのものです、今思うと。こうして適当にバラけて友達同士集まったり離れたりしながらデタラメな歌をうたいながら歩くほうが楽しいに決まっています。それに今は、ウォーキングやジョギング、それにトレーニングにしてもこうして歌ったり話したりしながら行うほうが効果があるとされているようです。でも管理する方は大変です。この時の引率の先生たちも、子供たちの様子を常に覗いながら、前後に車や自転車や、他の歩行者がないかずっと気をつけていました。林道に入ってから、前から車が来た時、少し列からはぐれた低学年の男の子を女性の先生が抱きかかえて戻していました。そんなことより強圧的に整列させて黙々と歩かせるほうが管理する側の都合から言えばずっと楽なのです。小生意気なガキであった私はそうした軍事教練もどきが大嫌いでした。それで、こんなことをさせる教師たちに、自己満足か大人の都合や理屈でやらしているのだろうと思って、ふかく軽蔑しておりました。教育に関してもいろいろ言われていますが、今の子供たちのほうが、私たちの頃よりずっと伸び伸びとして幸せだと思います。その分、先生たちは大変で、でもよくやってくれているんだと思います。

喜佐谷の登山道入り口

喜佐谷の登山道入り口

さて、しばらく並んで歩いた子供たちを追い越しての喜佐谷の集落に向かいます。途中の川沿いに公園のような場所があって、そこに先発して先回りした先生らしき人が待っていて、子供たちの姿を認めて来た来たとか呟いていたので、そこでキャンプをするのでしょう。私は歩を進めますが、いくら歩いても登山口らしきものはありません。まさかこのままアスファルトの道を歩き続けるのかと思って心配になりましたが、集落を外れたあたりにようやく標識を見つけました。

吉野に行ってきました 1

大和上市駅からバスで宮滝まで

吉野に行ってきました。普通に花の季節にも行っているし、別のルートで遊びたいと思って「森林セラピー」と称して紹介されていたコースを歩いてみることにしました。ただし、バスの時刻などもあるので、逆から辿ることに。

別に急ぐわけでも仕事でもないので、近鉄特急を使わず最寄りの「川原町」駅から都合3回乗り換えて3時間37分かけて大和上市駅へ。ちなみに出発は6時11分です。この大和上市駅というのが、田舎臭い良い駅です。なんとか田舎の駅舎をモダンに見せるように頑張ったというキッチュさがたまらなく良い。バブル期以降、駅前再開発と称して、ロータリーとそれを囲むような四角い商業施設と高層の目的不明のビルといったものが日本全国に広がってしまいました。規模の大小の差があるだけで、それらはどこも同じように無味乾燥、なんの面白みもありません。テナントと言ってもたいていは全国チェーンの店舗ばかりです。でも、さすがにここまでは、シロアリのようなディベロッパーや役人も、手と金が回せなかったとしたら喜ばしいことです。

近鉄大和上市駅

近鉄大和上市駅

さて、二人年配の駅員さんがいて、一人に川原町発の切符を見せて清算してもらいます。ここには自動精算機なんてありません。私は、特に決まった用件とかがない場合は、気が変わって途中下車したり目的地を変えたりできるように、とりあえず乗車時は初乗り区間の切符しか買わないことにしています。しばらくして、お客さん、すいませんがこれは何線の駅でしょうか?と尋ねられます。おい、いくらローカルな駅でも、自分の会社の駅だぞと思いつつ、名古屋線の四日市の一つ名古屋寄りの・・・と言って解決。バス停はどこかと聞くと、もう一人の駅員さんが案内してくれるが、本当に駅の真ん前で、別に案内されるまでもないのだけれど、付いてきてくれて、どこまで行くと聞かれる。宮滝までと答えると、運賃を調べて教えてくれる。そうこうしているうちにバスが来る。

バスに乗ってあらためて駅前の商店の前を通る。なんとも素敵な古い荒物屋とか食堂とかあって心惹かれる。「ひかり食堂」という看板に暖簾も出ていたので、あの時間帯(午前10時前)でもやっていたのだ。もう少し早く来て、遊んでおくのだったと後悔する。もしやと思って帰ってから“大和上市 ひかり食堂”で検索してみると、ここもブロガーが訪れています(大和上市駅前ひかり食堂)。私の好きな「食堂」の要素がすべて揃っているのではないかと思われます。こんど吉野方面に来る時は途中下車してでも絶対に寄ります。

バスは、駅前を出て吉野川沿いに169号線を走る。この辺りも何度か車で走っているのだが、バスの車窓からのんびりと眺めているといい風景だ。道沿いの家並み商店やその看板も面白い。コンビニやチェーン店の見慣れたケバケバしい看板がないのが何より良い。それにバス停の名前になっている地名がいろいろ興味深く、その謂れを想像してみる。やっぱりこうした所は車で来てはダメなんだ。

宮滝のバス停を降りると、なんだか見覚えのある醤油屋があった。それとバス停近くの案内を見ると提灯屋とか竹細工の店も近くにある。寄ってしまうと、これから山道を歩くのに醤油や提灯を抱えて歩くことになりそうなので、我慢して登山口を探すことにする。そこに、遠足のような小学校中低学年と思しき一団が先生に引率されて現れる。どうやら方向は同じようだ。

宮滝バス停から吉野川を渡る

宮滝バス停から吉野川を渡る

「山」に樹を見に行く 4 サワグルミ

サワグルミやオニグルミなどのクルミの仲間は、山の沢筋に多い木ですが、平地の河川敷や中洲などでもよく見られます。かつて住んでいた京都の桂川の中洲にはオニグルミが何ヶ所か自生しておりました。講座で桑名に自転車で通う途中の、東海道の朝明川にかかる橋のたもとの河川敷にも2本のクルミの木がありました。確認はしてないのですが、残念ながらサワグルミだと思います。残念というのは、実を採って食することが出来ないという意味です。オニグルミとサワグルミは葉とか幹だけでは、なかなか判別しにくいのですが、夏に青く丸い実がつけばオニグルミだという事で良いでしょう。細かい事を言えば、小葉の縁に細かい鋸歯があるのがサワグルミということなど色々判別法はあるようです。

サワグルミの群落 このようにまとまって生えているのは珍しいように思います。 GXR A12 28mm

サワグルミの群落
このようにまとまって生えているのは珍しいように思います。
GXR A12 28mm

クルミの類は、先駆樹種の一つ、それもかなり有力なもののようです。沢筋や河川の中や際に多いというのも増水などで流された後に真っ先に侵入してくる樹種ということなのかもしれません。それと、木としての個体の寿命は100年とも150年とも言われています。サワグルミなど、シオジと間違えるような通直なけっこうな樹高のものも見ることもあるので、成長はその分早いのでしょう。それでやがては他の樹種に遷移されていく。クルミの単相林とか大きな群落というのは見たことがありません。

こちらはオニグルミ(たぶん?) GXR A12 50mm

こちらはオニグルミ(たぶん?)
GXR A12 50mm

木工材料としてのクルミ類の位置づけは、

ウォールナット > オニグルミ > サワグルミ

という感じでしょうか。色目(色の濃さ)、重さ、固さも上記の順になります。私は、この仕事を始めた最初の頃、たまたま手に入れたサワグルミを使って小さな棚を作りました。その端材で左勝手の繰り小刀の鞘を作りましたが、今手元にあるのは、それくらいです。妙な固定観念に取りつかれて、その白く軽く柔らかい、穏やかな木目の材を、安物の下駄の材料とか、当時フラッシュの心材として、やはり安く出回っていたファルカタみたいなものくらいに思っていました。ちなみに、そのファルカタも今やカービングなどに良く使われる高級材になりました。

でも、今でもそこそこ資源が残っていそうなこと、成長が速く更新資源としても管理できそうなこと、白く柔らかく、大人しい木理で応用範囲が広そうなこと、など家具木工材料として実は有用なのではと考えています。

「山」に樹を見に行く 3 ミズメ

ミズメについては、以前に書きました(→ミズメ)。本当にサクラによく似ていますが、分類上は科から違っています。

ミズメ

ミズメ GXR A12 50mm

樹皮もサクラにそっくりです。縦に入った傷は獣の爪研ぎの跡かなあ。

ミズメの樹皮

ミズメの樹皮 GXR A12 50mm

そのミズメを使って仕事をしました。訓練校の実習以来、さんざんやった上端留(うわばとめ)五枚組接ぎというものです。 こういう仕事にはカバの類のように粘りがあって固い材が刻みやすいのです。 中でもミズメはその質や見ためもヤマザクラに近い良材です。

上端留五枚組接ぎ

上端留五枚組接ぎ

これで何を作っているかというと、8ミリ厚、800×600のガラスを落としこんで漆定盤にします。自分用です。座り作業用に短い足を付けようとも思いましたが、今後の使い勝手も考えて天板だけにしました。これならテーブルに置いても使えます。この上で漆をヘラでねったり混ぜたり、あるいは漆錆や糊漆・麦漆を練ったりします。前から欲しかったのですが、ようやく作る事が出来ました。

ミズメの枠に8ミリ厚のガラスを落とし込んだ漆定盤

ミズメの枠に8ミリ厚のガラスを落とし込んだ漆定盤

漆定盤細部

漆定盤細部

「山」に樹を見に行く 2 白い花など

先日行った「山」では、深緑の中で白が目につきました。

まずは、ヤマボウシ。ヤマボウシの名は山法師からきているとありますが、そう言えば白い花弁(ガク)が時代劇などの叡山の僧兵のかぶり物のように見えたりします。

ヤマボウシ

ヤマボウシ GXR A12 50mm

続いて、ウツギ。卯の花です。おからの事を卯の花と言ったりしますが、なんとなくそう見えてくるから思い込みというのは恐ろしい。木工屋にとっては木釘の材料として知られています。ウツギは山と言わず平地の際にもよく見られるので、頂戴して自分で木釘を作ろうといつも思うのですが、ヨキとか鋸とかを持参していないので、いまだにかないません。

ウツギの花(卯の花)

ウツギの花(卯の花) GXR A12 50mm

あと車で走っていても目につくのはマタタビの花と葉です。これも山の際に自生するツル性の植物で、この時期には葉を白く塗ったようになります。

マタタビの花と葉

マタタビの花と葉 GXR A16 55.5mm(85mm相当)

変わったところでは、モリアオガエルの卵。画像では杉の木にたくさん産み付けられています。切り株に産み付けられているのは初めて見ました。枯死したか伐られたかで他に適当な木がなかったのでしょう。

杉の木に産み付けられたモリアオガエルの卵

杉の木に産み付けられたモリアオガエルの卵

切り株に産み付けられたモリアオガエルの卵

切り株に産み付けられたモリアオガエルの卵

「山」に樹を見に行く 1

さて、一昨日修了試験があり、今日が修了式。昨日は一日空いており、梅雨の中休みで晴天らしい。また週末は天気が崩れると予報されている。一月半ほども介護の勉強が続いて、最後は看取りに関することだった。やはり色々思い出されて気分がクサクサしていたこともあって、思い立って「山」に出かけることにしました。

昨秋出かけたトチ・ミズナラのコース。途中、あれ、こんなにサワグルミが多かったかなと思って歩を進めると、またこの雷に打たれたブナに出会った(→ブナ)。前回と同じ道に迷い込んだ事になります。次、3度ここに来ることになったら、この瀕死のブナが私を呼んでいるのだと思うことにします。あるいは、今朝早めのタローの散歩の時に川沿いの対岸でずっと向かい合って歩を進めたキツネに憑かれたか?さらにこの日は、珍しくもテンに出会った!沢にひょっこり現れて、こちらを気にする風でもなく尾根に向かい倒木の中に姿を消す。テンは、狸よりもキツネよりもたち悪く人を騙すとか言うんですよね、確か。

再び出会った雷に打たれたブナ GXR A12 28mm

再び出会った雷に打たれたブナ GXR A12 28mm

 

もうあのミズナラは、土に還るというより倒れた姿がすでに環境そのものになりつつあります。

すっかり環境の一部となったミズナラの倒木

すっかり環境の一部となったミズナラの倒木 GXR A12 50mm

千の)(の葉を再びまとったトチ(→トチの木 その3)。

初夏のトチ

初夏のトチ GXR A12 28mm

峠の入り口、の門番のように見ていたトチの樹も、既に立ち枯れて久しいのだとあらためて気が付きました。

地蔵峠入り口のトチ

地蔵峠入り口のトチ GXR A12 28mm

私の好きなブナの樹。樹の写真ではありがちですが遠景ではその幹の立派な力強い様子が伝わりにくい。

ブナ

ブナGXR A12 28mm

太夫たゆうの大楠

コンビニにおいてあった観光案内の地図を見て、昼休みに行ってみた。講座が開かれている有料老人ホームから自転車で5分程、ただし登り坂が続く。いかにも古い城下町の山の手という風情の住宅街の中にあった。2本並んでいるのか根は共通なのか、よくあるすっとした楠の巨木ではなく、強い樹勢と荒々しいばかりの姿を持つ。おそらくかつては他の競合する樹木と光を奪い合いながら、それを圧倒してきたのであろう。そうした野生の強さとおぞましさのようなものすら感じる。

残念ながら、その姿・醸し出す空気のようなものをカメラにうまく収めることが出来ない。

 

太夫の大楠1 GXR A12 28mm

太夫の大楠1
GXR A12 28mm

太夫の大楠2 GXR A12 28mm

太夫の大楠2
GXR A12 28mm

太夫の大楠3 GXR A12 28mm

太夫の大楠3
GXR A12 28mm

トチの木 その3

たましひのやうやく休息(やす)むときを得て千の)の葉を捨てし栃の樹

図書館で借りた『斎藤史歌集 記憶の茂み』の中の一首。昨晩、床に入ってから読んだもの。

斎藤史さんには、認知症の盲母を詠んだ一連の鬼気迫るような歌があります。それらは安直に引用するのが憚られるようなものです。興味のある人は、図書館などで、お読み下さい。

晩秋のトチの木

晩秋のトチの木