剣留と面取り

今、定番とも言えるオーディオボードを作っています。框組の工作になりますが、そこで剣留という接合方法を使っています。

剣留を十字に使うと意匠的にも面白いものになります

剣留を十字に使うと意匠的にも面白いものになります

剣留けんどめについては、前にホームページの中で書きました(「剣留と導突鋸」)。そこでも触れたように、私は框組で何かを作る時には剣留を多く使ってきました。本来は、馬乗りとか、面腰と呼ばれるやり方が使われる場合でも、この方法をでやってきました。つまり、剣留がその構造から意味を持つのは、カマボコ面など組まれる面全体に加飾が施される場合です。材の端に面取りや加飾する場合であれば、その部分だけを欠き取ってそれぞれ留でつなぐような馬乗りとか面腰の方が合理的です。

実際に私も最初の頃は、剣留とカマボコ面を併用していました。そのためにいくつかのRの内丸鉋を購入して仕込みました。でも、剣留にカマボコ面というと、何を作っても李朝家具風になってしまってどうも面白くない。それで、剣留に普通の切り面といったいわば変則な工作をしてきました。

馬乗りとか面腰をやらなかったのは、それらの組手が、ホゾ取盤とか傾斜丸鋸盤といった木工機械があれば、誰でもやれてしまう程度の工作だからです。パートのおじさんやおばさんでも、3日もやれば相応に出来てしまうでしょう。こう言ってしまうとお叱りを受けるかもしれませんが、機械作業というのは本来的にそうしたものだと思っています。でないと機械を使う意味がない。私は、自分の仕事に対して手作りなどというインチキなコピーを使った事はありません。ただ、手加工の要素をこうした刻みと呼ばれる作業にもどこか取り入れないと、どうも仕事をしていても面白くない。

下穴はトリマーで決めて鑿で仕上げる

下穴はトリマーで深さを決めて鑿で仕上げる

剣留のメスの欠き取りの加工は、下穴はハンドルーターなどを使うにしろ仕上げは鑿で行うのが一番合理的でしょう。当然墨はシラガキで付けます。この仕事をはじめたばかりの頃に、訓練校の先輩の工房を訪ねた時にその話になりました。先輩氏は、角鑿盤の、箱ノミを、斜めに着けて取るのだとおっしゃっていました。そんなことをするくらいなら、鑿を使ったほうが速いし正確だしとその時も思いましたしたし、実際そうでしょう。 今思うと、その先輩氏の工房はまともに使える鑿がない(研いでない)状態だったのでしょう。そうして結局機械と電動工具に全面的に依存していった例をいくつも見てきました。

一方、オスの剣の方は、丸鋸盤に角度定規などのジグで簡単に切れそうです。ところが、やってみると、どうも上手くいかない。理由は敢えてあげると、機械加工と手工作では、寸法の基準のとリ方から墨の付け方も違う。それを混在させると、中途半端な結果になるというのは、他でもありました。ですから、剣の部分もキチンとシラガキと留定規で墨を付けて、導突鋸でさっと挽くのがよろしい。それに「剣留と導突鋸」でも書きましたが、ゴチャゴチャ丸鋸盤をいじっているより、こちらのほうが早いのです。 写真はその記事から再掲しています。

剣の部分は胴付鋸で挽く

剣の部分は胴付鋸で挽く


墨さえきちんと付けてあれば、きれいに切る事が出来る。

墨さえきちんと付けてあれば、きれいに切る事が出来る。

第68回 正倉院展に行ってきました

チケット

チケット

朝、墓参りに行ったあと第68回正倉院展に行ってきました。今年も会場の国立博物館に向かう前にならまち商店街にある刃物屋・菊一文字に寄ります。これもここ数年の恒例のようになっています。店にいた女将さんにご主人のことを尋ねると今年の5月に亡くなったとのことでした。88歳だったそうです。昨年の正倉院展の時にお邪魔した折には元気な姿を拝見していたのですが、そのすぐあとの12月に圧迫骨折で入院、予後悪くそのまま亡くなられたそうです。常連のお客さんも多く、店を閉めるわけにもいかないので、今は一人で店を守っているとおっしゃっていました。

菊一文字で買った2分の三角刀。播州三木のものとのこと。

菊一文字で買った2分の三角刀。播州三木のものとのこと。

こうした小さな専門店を応援したい気持ちもあって、寄るたびに何か買っています。亡くなったご主人に薦められて購入した銅のおろし金などはたいへん重宝していて今は毎日のように使っています。言われた通りプラスチックのまがい物と、これでおろした大根は別物です。今回も2分幅の三角刀を買いました。


今回の展示では、これまで見たこともなかったような銅に鍍金の鈴のようなものが多数展示されていました。蓮華の形、ウリやクチナシの実の形などいずれも小さくかわいらしいもので、金工をしている人が見ればさそ面白かろうと思います。木工屋的に面白かったのは月並みですが、楩楠箱べんなんのはこと、檜八角長机ひのきのはっかくちょうきなどですが、これはまた次回にします。

良い天気でした。猿沢池から興福寺の眺め。

良い天気でした。猿沢池から興福寺の眺め。

これはいったいなんだろう?

これはいったいなんだろう?

鉋台の刃口埋め 3 番外 刃口脇の処理について

前の記事の鉋の刃口脇の欠き取りについて、木工界の碩学で稀有の著書・『組手 國政流・江戸指物の美』の著者である阿部藏之さんからメールを頂きました。以下その一部を引用します。

大工職は台直しが頻繁で、(中略)水分のある被削材が多いので、屑だしをよくするために切るようです。深く切ればびびりが出ますね。家具精密木工・鉋台打ち職では無用かと。

また、素材別、業務別で使い勝手や好みも違うので、この辺りの処理の仕方は色々とのことです。これまで、注意して見てこなかったのですが、大工、木型屋、建具屋など機会があればそれぞれの道具を拝見して、その由緒など聞いてみたいものです。 だたそこまで道具にこだわって仕事をしている職人がいかほど残っているかとも思います。

台直し用のジグと専用の台直し鉋。これで刃口を保護しながら脇も削る事が出来る。

台直し用のジグと専用の台直し鉋。これで刃口を保護しながら脇も削る事が出来る。

それで、わたしは現状どう処理しているかと言うと、常用の鉋ではごく薄く欠き取っています。やはり阿部さんもおっしゃるように、仕事中などに台直しを行う場合には、あまりクリティカルな処理はやってられないという感じです。ただ、最後の仕上げ仕事用で寸八とか二寸の鉋など台自体が微妙な調整が必要なものは、上のような治具とそれ専用の台直し鉋を使っています。使い方の説明は不要でしょう。これは、どこかの雑誌か何かで見たものを真似したもので、もちろん私のオリジナルではありません。

鉋台の刃口埋め 2 やってはいけない→「横断型木端埋め法」

「鉋台の刃口埋め 1 簡便木口埋め法」という記事を載せてから、随分と日が経ってしまいました。今回は、それに関連してやってはいけない方法について触れます。

廃業した木型屋からもらった小鉋

廃業した木型屋からもらった小鉋

画像は、この仕事をはじめたばかりの頃に、ある廃業する木型屋さんから道具を分けてもらった時に紛れて入っていた小鉋です。見て分かる通り刃もベタ裏になっていたので、叩いて無理から裏を作って台も直しています。ホゾの面取りなどの荒仕事に使ったりしていました。この鉋の刃口は前の所有者によって埋められていました。とりあえず横断型木端埋め法とでもしておきます。

刃口部分の拡大図

刃口部分の拡大図

こうした刃口埋めのやり方は、現場などでもよく見ました。それにネットでも紹介されています。ご丁寧に動画にしているサイトもあります。このやり方は、丸鋸盤と2〜3分(6〜9ミリ)くらいのカッターがあれば5分もあれば出来ます。きわめて安直な方法ですので、おそらくまねをする人も多いでしょう。しかし、これも油台と同じで、よく考えもしないでやるべきではありません。

鉋の台というのは、よく見るときわめて不安定で微妙な形状をしています。真ん中に大きな甲穴が開けられそこに鉄と鋼の板が相応の固さで打ち込まれています。その上で、台の下端の平面を維持しなくてはなりません。図は、鉋台の断面と下端の模式図です。

鉋台の断面と下端の模式図

鉋台の断面と下端の模式図

これを、上記のように刃口部分を素通しで溝を掘ってしまうと、台にとって一番大事な下端のその中でも基準となるべき刃口部分で、台木の繊維を切断してしまうことになります。しかも、こうした横着をやる人は当然のように木端勝手の材で台木の繊維と直行する方向で埋木をします。不安定になった下端に、さらに乾湿で膨張・収縮をするやっかいな要素を持ち込むことになります。木や道具のことを少しでも分かっている人、まして木工のプロがするべき事ではありません。

それでも、私が上の鉋を頂いた職人のように、忙しい日常の業務の中で、荒仕事用の小鉋などでこうした横着をやってしまうことまで否定はしません。現場や他の人の職場や工房で、こうした物を見かけても、とりたてて何か口にするような野暮でもないつもりです。ただし、こうした横着で不正常な、あえて言うなら間違ったやり方をネットにあげたり、動画にまでして広げようとするのはいかがなものかと思います。不正常の一般化というか、前に取り上げた油台と同じ事がやられている気がします(「鉋は油台にしない方が良い」)。


刃口脇の赤丸部分を欠き取ってきた。

刃口脇の赤丸部分を欠き取ってきた。

さて公正を期すためにも、恥を晒しながら関連する問題を書いておきます。わたしは鉋台の刃口の脇の部分を上の画像の赤い丸のように欠き取ってきました。台直しをした事のある人ならお分かりのように、この部分というのは台直しの時に残りやすいのです。それで、はじめから欠き取っておくと楽なのです。これも良く見るやり方ですが、やはり台の下端の繊維を切ってしまうという意味では同じく問題があります。それでもやるなら極力薄く、また鑿を立てて軽く削る程度にしておくべきでしょう。思い出すのは、もう随分前のことになるのですが、ある現場で一緒になったベテランの大工さんの鉋を拝見させてもらったところ、この部分が欠き取ってありません。その理由を尋ねたところ、困ったように口ごもっていました。別に秘密だから教えないと言う風情でもなく、上手く説明出来ないから困ったという感じでした。その時に自分で色々考えて気づいておくべきだったと、自分の不明を嘆くしかありません。

ネットにおける著作権 1 わたしのサイトからの画像盗用について

別に大仰な議論を展開しようというつもりはありません。後で述べるように、わたし自身のサイトからの画像の盗用の問題に触れるために、自分なりに問題を整理したいだけです。また、しばしば映画や楽曲の違法コピーの流布・販売として問題になる著作財産権の問題は触れません。あくまでも、自分が書いた文章や、撮影・編集した画像のささやかではあれ、絶対的な権利とそれの盗用の問題についての私見です。

他人のコンテンツを拝借するのは、引用盗用のどちらかである

色々なサイトの日本語による著作権表示を見ると、転載転用無断転用引用などの言葉が使われています。基本は、それらすべてを禁止した上で、そのために、やれ事前承認が必要とか、事前連絡が必要とか、あります。その言葉の定義とか使わけ、違いがよく分かりません。おそらくこんなことを書いているサイト管理者も、よく分からずに何かの雛形か、もともとのブログやサイトのテンプレートをそのまま使っているのでしょう。

ネット上で、他のサイトの画像や文章や他のすべてのコンテンツ(嫌いな言葉ですが、こうした例ではよく使われるのであえて書きます)を、自分のサイトに取り込むには、引用盗用の二つしかありません。どちらか一方です。上にあげたようなその他の、転載転用無断転用などという言葉は、それを曖昧にしているだけです。

引用元(出典)を明記しないものはすべて盗用である

その引用と盗用のどこが違うかは、原著作者名と引用元(出典)を明記するかしないかだけです。そして、原則としてすべての引用は、引用元の承認や通知と無関係にすべて合法であるべきです。逆に、引用元(出典)を明記しない転載はすべて盗用であり犯罪です。ついうっかりとか、盗用の意識はなかったというのは、関係ありません。よく盗用者が言い訳にするそうした口実は、少なくとも現在の日本の法規範の基礎をなす意識・常識から言って不当な言い逃れにすぎません。これはまた別に書きます。

たとえば夏休みの宿題で、一枚の絵を描いて提出という課題があるとします。私たちの頃は、定番でした。まあ、別に子どもの宿題ではなくて、公募展への応募と考えてもいいでしょう。どこかに他人の描いた絵かポスターが張り出してあったとします。人に見てもらうために敢えて外に掲示してありました。それを無断で持ってきて、自分の描いた絵だとして宿題として、あるいは公募展への応募として提出したら、それは許される行為ではありませんね。もう少し言えば他人をあざむく詐欺であり犯罪です。他人の管理するサイトから無断で画像を持ってきて、自分のサイトに原著作者名や出典などなしに貼り付けるのはそれと同じことです。あとであげるわたしのミズメの画像の盗用などは、パクってきた写真を自分の個展の写真の中に、こっそり混ぜて展示するようなものです。

引用の例

具体的な例をあげます。まずは、引用です。よい例です。DIY FACTORYというサイトの、オーク(ナラ)材の特徴と、DIYで扱う場合の加工や塗装方法について。というページに、わたしのサイトからミズナラの森の写真が使われています。ただし、出典 roktal.comとして、そこにわたしのサイトへのリンクが貼られています。事前にも事後にも連絡をもらっていませんが、今回自分の画像転用を調べている際に見つけました。もちろん正当な引用でありまったく問題はありません。むしろ元の画像は、家具材料にされる樹木の姿とかその森の様子を家具や木工に関心のある人に触れて欲しいと思って載せたものです。ですから、こうしたDIYを運営するサイトにおいて材料としてのナラを解説する一環として画像を使ってもらうのは大歓迎です。それが営業のサイトであるか、ボランタリーなサイトであるかも関係ありません。

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引用されたミズナラの森の画像


盗用の悪質な例 2件

8年間も盗用され続けていた

今度は、盗用されている例をあげます。わたしの本サイトのミズメという記事にある画像が、あるサイトに8年間も盗用されています。下の画像です。ちなみに、この画像の元のデジカメデータは、そのEXIFとともに保存してあります。盗用者に居直られたり逆ギレされたりした時のために、こうした元のオリジナルデータは保存しておくべきだと今回痛感しました。

盗用されたミズメの幹の画像

前者は所属する会のブログへの投稿、後者は個人ブログのようですが、投稿者したがって盗用者は同一のように思われます、特に後者の記事では、他の多くの花などの画像が並ぶなかで、わたしのサイトから盗用したミズメの画像が貼られています。善意の第三者が見れば、この画像も投稿者である浅木、及び定年生活なる人物が撮影・編集したものと当然思うことでしょう。盗用者は、分別のあるはずの定年生活者であり、サポートレンジャーとか指導員とか呼ばれる人のようですが、少なくともネットの世界においては良識とか定見とかとは無縁な人物のようです。実に不愉快です。

盗人猛々しい同業者サイト

読んでくださっている人も不愉快だと思いますが、もう一件画像盗用の例におつきあい下さい。こちらは商用のサイトであり建築設計業務という広い意味で同業者であること。他人の画像を盗用しながら、自分ではぬけぬけと著作権表示を自分のサイトでしていることなど、かなり悪質です。

こちらはタクミホームズ提供する建築用語集ー現場で使える建築用語の中の1ページです。ここに、わたしのサイトの留隠蟻組・座卓の製作の中の画像が、盗用されています。この画像はわたしの工房の中で、三脚を立ててタイマーを使って撮りました。部材の後ろに写っているのは、わたしの足です・・・。これもオリジナルデータがあります。

盗用された留隠蟻組座卓の画像

この盗用者のサイトには、他にもたくさんの画像があります。そのすべてがパクリとは思いません。管理人や社員が撮ったものもあるでしょう。それなら、こうした作業中に仕掛品の写真を撮って編集するというのが、そこそこ手間がかかるというのは分かっているはずです。それを承知で他人のサイトからパクってきて載せるというのは、いかにもさもしい行為だと思います。それにいやしくもを名乗っているなら、これくらいの組手は、見本としてでも自分たちで作ったらよいでしょう。なんだか画像(わたしの仕事)に対する説明もおかしいですしね。自分でおやりなさい。

それとさらに許しがたいのは、このサイトのトップページには、Copyright kenchikuyogo.com All Rights Reservedとヌケヌケと著作権表示がしてあることです。著作権表示の件は、また別記事で触れたいと思いますが、それ自体に法律的な意味はありません。こうした表示をしようがしまいが全ての著作物は、それが出来た段階で著作権が発生します。それを敢えて表示するのは、まあこけ脅しのようなものです。しかし、ここのようなパクリサイトにこれをやられると別の意味を感じます。All Rights Reserved、つまり、パクったわたしの画像も含めて全ての権利を保持すると言っているのです。盗人(ぬすっと)猛々(たけだけ)しいとは、こうしたことです。他人の物を盗んできて、あらためてこれはオレのものだオレに権利(著作権)があると言っているのだから、もうあきれる他ありません。

画像のパクリは、簡単に分かるようになった(くやしいがGoogle様のおかげ)

ご存知の人も多いと思いますが、ネット上の画像の盗用を調べるのは実に簡単に出来るようになりました。興味があれば、Google 画像検索とかで検索してみれば、そのやり方はすぐに分かります。わたしも最近その事を知って、試しに自分のサイトの画像を調べてみたのです。そうすると盗用先が出てくる出てくる。かなり暗い気分になって途中でやめていましました。もうね、特に公的、社会的、あるいは商業サイトでもない個人がやっているブログなどは、どうでも良いかという気になります。ただ、上にあげた例のように、特に悪質と思われるものは、ネットにおける最低限の良識とか秩序を守るためにも晒していこうと思います。

益城町 2 木造にダメ出しする前に色々考えたいとは思った

益城町、28号線沿いのK園芸さんの木造倉庫。大きく傾いているが、なんとか倒壊はまぬがれている。

益城町 28号線沿いのK園芸さんの木造倉庫

益城町 28号線沿いのK園芸さんの木造倉庫

おそらく建て増しした部分の胴差と柱の接合部分。差し違いの2枚ホゾになっている。一方のホゾが折れているが、なんとか抜けずにいる。

増築部分の柱と胴差の接合部。一方のホゾが折れながらなんとか持ちこたえている。

増築部分の柱と胴差の接合部。一方のホゾが折れながらなんとか持ちこたえている。

本梁に、2間の梁2本を掛ける。大入れのおそらく蟻掛けが、縦揺れのためか外れかけているが 、持ちこたえている。

倉庫内の本梁と梁の接合部。構造的に、もっとも重要な部分だと思われる。

倉庫内の本梁と梁の接合部。構造的に、もっとも重要な部分だと思われる。

上の接合部。

上の接合部。

この倉庫は、筋交いも火打ちも、まして耐力壁もない木造2階の軸組の建物だが、2回の震度7の揺れにも、こうしてなんとか倒壊せずに持ちこたえている。

今回の地震でも、木造建築の耐震性能が問われる事になると思う。実際に多くの木造住宅が倒壊して人が亡くなっている。その倒壊の仕方の多くはは、2階建の住居の1階と2階の間の胴差とか腰桁と呼ばれる横架材と柱の接合部分から柱が折れて(あるいは桁やが抜けて)、1階部分を2階部分が押し潰すような形になっている。

益城町の崩れた木造住宅。

益城町の崩れた木造住宅。

今の耐震診断では、木造のこうした柱と梁・桁の接合はピン接合として扱われているのも、こうした現状では仕方ないのかもしれない。ピン接合というのは、柱と梁・桁が点で繋がっている、もっと平たく言えば積み木のように上に乗っかかっているだけと想定されている。対して、鉄骨造とか、RC造の場合は、枠(ラーメン)として柱や梁は一体の構造物として強度を図られる。だから、木造の場合どれだけ立派で入念な造りがなされた建造物であろうと、見かけ上筋交いや火打ち、不細工な耐力壁がないと倒壊の恐れのありと判定されてしまう。


人の命に関わる問題なので、いい加減な事を語ってはダメだとは認識している。ただ、古い木造だと言ってそれを建てた大工の腕とか経験・知見、その造りの入念さや精度を無視して、一律に筋交いだ、耐力壁だと耐震の問題を一元化してしまうのはどうかと思っている。それに、筋交いとか耐力壁、それに不細工な接合金具を使用する家は、必然的に柱や梁をボードなどで隠した大壁造りの家になる。構造材の腐朽とかシロアリの害とかは、かえって発見しにくくなるし、空気に触れない分腐朽しやすいだろうし、材の痩せに対して金具の増す締めとかはどうするのだろう。今回も、剥げたモルタルの蔭で、腐った土台や柱の住宅を複数見た。

木に携わる仕事をしている人間として、木造住宅や構造物が一律にダメ出しされているのは、やはり悲しい。それに、それに対する対策が、筋交いや耐力壁に集約されているのも実は危険だと思う。こうした発想は、木造=ピン接合という機械的発想から導きだされるのだろうが、プレカットのない時代の大工が構造に合わせて刻んだ仕口には枠(ラーメン)構造とまではいかないまでも、それに準じた耐力がある。K園芸さんの倉庫は、それを見を持って示しているように思う。

ソメイヨシノのテーブルを元の学校に納める

神戸のサクラを先日納品してきました。もともと2本のサクラの植えられていた棟のエントランスに置かれています。生徒さんたちが自由に座ったり、そこで遊んだり出来るようです。

長さは1500ミリ強。2本植えられていた樹から、それぞれ板をとって2枚を合わせた。

長さは1500ミリ強。2本植えられていた樹から、それぞれ板をとって2枚を合わせた。

同じ場所に植えられていた頃のこのサクラの樹の写真の額と小さなテーブルのセットも、同じサクラから作って納めています。

この看板は、講堂ほか校内外4カ所に飾られているそうです。

元の字は、大谷光照氏が、この学校のために書かれたものとの事。

元の字は、大谷光照氏が、この学校のために書かれたものとの事。

納品前に、工房の近くの堤防沿いのサクラの下に置いてみました。昨年は、このテーブルのサクラも、神戸の学校の庭で花をつけていたのだと思うと、不思議な感覚になります。

3分咲き程度の海蔵川のほとりで。

3分咲き程度の海蔵川のほとりで。


今回のサクラは、伐採の時季やその後の保管などひどい状態でした。その分、非常に手間がかかりましたし、丸太の状態の材積から製品の歩留まりは、2割を切っているでしょう。テーブルもベンチも、天板や座板以外の部材は、手持ちのチェリーやミズメなどを使いました。それでも、なんとか望まれる形になりました。材自体の性質は、硬くて粘り強く密で、その点ではヤマサクラと同様です。全国に、今何万本のソメイヨシノが植えられているか分かりませんが、比較的成長・更新も早いと言われています。ソメイヨシノは木工には使えないと思い込まされてきましたが、実際に加工してみると、こうした利用の仕方もあるのではと思います。

「和顔愛語」の看板

レーザー彫刻加工を依頼していた神戸のソメイヨシノの4枚の看板が送られてきた。和顔愛語というのは仏語(「無量寿経」にある言葉らしい)で、この学校の校是になっているらしい。そんなこととは別に良い言葉だなと思う。加工を依頼したのは、岐阜県の加子母森林組合。機械彫刻も含めて、色々な業者に問い合わせをしたが、ここは加工費もリーズナブルで、なにより話が早い。こちらの依頼の趣旨を汲んで、相応の加工方法を提示されて、あとはお任せ出来る。

こうしたものが4枚。鉋かけが、けっこう大変だった。

こうしたものが4枚。文字(画像)データは施主から頂く。鉋かけが、けっこう大変だった。

対して、 マック系の印刷屋とか看板屋関係というのは、なぜあんなに話をややこしくしたがるのだろう。やれ、.aiファイルでないととか、画像ファイルなら、300dpi以上で実寸大を用意しろだの、はなはだ煩わしい。別にそこまで高精細な加工を求めていないと言っても通じない。その点、この組合関係はこちらと同じ筋肉系な応対で気持ちがよい。