ケヤキ

丸ス松井材木さんで購入した厚み2寸(60ミリ)のケヤキの板2枚。長さは、いわゆる1間もの(1800ミリ強)。仕上げは拭漆にするが、最近よくある黄色のケヤキは勘弁して欲しいと、松井さんにあらかじめお願いして選んでもらっていた。昔のような赤光りするような、これぞケヤキと言った材ではない若い木だが、予算のこともあり、今これくらいなら上等だと思う。

丸ス松井材木さんで買ったケヤキの板2枚

丸ス松井材木さんで買ったケヤキの板2枚

これを長さ方向に4枚、厚み方向に3枚に割って、更に縦に半分に割って計48枚の板にする。最終的には24の観音開きの戸板になる。1ヶ月ほど寝かせて応力の変化による歪みを出してから木造りをやり直す。

48枚の板にする。観音開きの戸板になる。

48枚の板にする。観音開きの戸板になる。

歩留まりから言うと、シラタを除いて考えても50%を切るか。この手の厚み・2寸、幅2尺程度の曲がった耳付き板というのは、かつては私も岐阜各務ヶ原の広葉樹の市でよく買った。しかし、結局使い勝手が悪くこうして切り刻んで小さな部材にしてしまう。

(かざり)金具の職人さんを訪ねました

12日(祝)、連休の終わりの日に、次の仕事に関係したお願いに、名古屋の錺金具の職人さんを訪ねる。

面識はなかったのですが、簡潔なホームページ(名古屋神仏錺金具)をお作りになっていて、それを拝見して不躾にお願いしたい仕事の内容をメールでまず問い合わせる。すぐに律儀な返信をもらい、何度かやりとりをして時間をとって頂いて、自宅兼工房にお邪魔することにした。 玄関のすぐ脇にある道路に面した大きなガラス窓に二面を覆われた八畳ほどの作業所でお話を伺う。手掛けられた名古屋城本丸御殿復元の、襖の引き手や長押の錺金具を拝見する。素人目にも見事なもので、いずれも銅をタガネなどで叩いたり削ったりして、最後はメッキや箔押しで仕上げるとの事。

名古屋城本丸御殿の長押の錺金具

名古屋城本丸御殿の長押の錺金具

同じく本丸御殿の襖の引き手

同じく本丸御殿の襖の引き手

引き手の制作過程。銅板を叩いたり削ったりして整形してゆく。

引き手の制作過程。銅板を叩いたり削ったりして整形してゆく。

こちらは、箔押しで仕上げてある。地金の上に水銀を塗ってその上から金箔を押して、その後から加熱して水銀を飛ばすのだという。いったんは金と水銀が合金化しており、その後水銀の成分を加熱して飛ばすため、微妙に水銀の成分が残る。それで普通の金箔と比べて落ち着いた上品な色合いとなる。また箔の微細な筋や継ぎ目も残らず強度も、メッキはもちろん漆で焼き付けたものより高いのだそうだ。

柱の錺金具。水銀で箔押ししたもの。

柱の錺金具。水銀で箔押ししたもの。

肝心の仕事の依頼に関しては、受けてもらえました。拝見した仕事から見て、ある意味失礼かとも思いましたが、そこはお互い「仕事しい」同士、妙な駆け引き抜きで、仕事の中身や予算も隠さず申し上げれば、なんとかしてもらえるものだと思いました。体使って仕事している分には、そんなにお金が儲かるわけではないことも分かってますしね、お互い。私は、こうして異業種の職人さんとお話するのが好きです。店舗の仕事や造作の仕事の場合は、大工や、軽天屋、クロスや左官と言った内装屋、水道屋、ガス屋、椅子張り屋などなど、皆、腕が太く上半身がごつくて、なんだか同じ空間にいても安心感があります。子育てを経験した女性も、それなりに腕が締まってたくましくていいです。逆にホワイトカラー(これも死語か?)な上半身が貧弱な男たちや、職人以外の異様に腕の細い若い女性は、もうなんだか別の世界の人のように思えてしまいます。


さて、この日も、近鉄と地下鉄を乗り継いで出かけました。休日ということもあって、そんなに混んではいなかったのですが、気になったのは乗り合わせた列車の優先座席に座った人間が、ことごとくスマホをいじっていた事。10代と思しきガキから50代くらいのオバさんの団体まで、老若男女を問いません。地下鉄では座席の足下に大きな字で携帯の電源をお切りくださいと書かれています。車内放送もしつこいくらい繰り返されます。見えない聞こえないのか、そのふりをしているのか。あと、これは主に若い女性ですが、電車が着いてホームに降りたあとも3人に1人くらいの割合で歩きスマホをやっています。親戚のおばさんで、ペースメーカーを埋めている人がいると言うことを別にしても、なにか悪いものに取り憑かれている亡者のようにしか見えません。ご本人たちは、そうした自分の醜怪で無様な姿を、一度客観的に見直してみるという事をしないのか不思議です。

終い弘法で買ったもの2014 その1 鉋身3枚

弘法さんに例年出展している砥石屋。砥石の売買もおかしな事になっていますが、そこそこ良心的価格設定。

弘法さんに出展している砥石屋。砥石の売買もおかしな事になっていますが、ここはそこそこ良心的価格設定。

鉋身3枚

大宮通り沿いの入り口から入ってすぐの謂わば一等地に今年も出展していた砥石屋で買いました。もう道具は買わないと決めているのですが、冷やかしのつもりで覗いたこの砥石屋で目に入ってしまいました。鰹節削りを頼まれている事もあって、こうしたチビた薄い、出来たら頭の四角い鉋があればと思ってはいました。それにこうした屋外で見るとありがちなのですが、これらはせいぜいがいわゆる寸四くらいの小鉋だと思っていました。値段以外に書いてあるものは、こうした露店でのつねで無視。

終い弘法で買った鉋身3枚。いずれも地金が柔らかく鋼が薄く使いやすそうだ。しかもちゃんと使われている

終い弘法で買った鉋身3枚。いずれも地金が柔らかく鋼が薄く使いやすそうだ。しかもちゃんと使われている

一目、地金は柔らかそうで細身な作りの私の好きな形だし、それなりにちゃんと使われ研ぎ減ったもの、つまりは良く切れて使いやすいものだったという事だ。それにヤクザなテキ屋の手によってグラインダーなどかけられていないのも良い。古い炭素鋼の場合顕著だと思いますが、その時点で刃物としては終わってしまいます。肝心の裏にも錆が出ていますが、「クサレ」といわれる鋼を貫通しているような錆傷はないようです。と言う事で、3枚を選んで合わせて3,000円で購入。あ、関西では常識ですが、こういう所で言い値で買うのはアホですから注意して下さい。

実際に持ってかえって見ると、店頭での印象より大きい。札に2寸半とあるのは鉋幅の実寸法で、鉋の呼称としては二寸となる(この辺りのことは鋸身の呼称と同じでややこしいのだが、ここでは触れません)。同じく2寸のシールのものは、実際には寸六のそれになる。

裏を押し直す

こうした露店に並んだ中古鉋の場合、裏は押し直すというより作ると考えたほうがよいでしょう。特に、こうしたチビたものはかなりの覚悟が必要です。慎重に、叩いては押しを繰り返し、じっくり裏(隙)を作ってきます。しかし、二寸の鉋の四角い形のものを、鋼に玄能を当てて割ってしまいました。気を取り直してなんとか他の2枚の裏を作りました。まだ完全とは言えませんが、とりあえずこんなものでしょう。

裏を作った二寸の鉋。「別誂」、「請合」とはあるが銘は読みづらい。

裏を作った二寸の鉋。「別誂」、「請合」とはあるが銘は読みづらい。

昔よく見た「土牛」、「鉄山人」「井本」の刻印。よく切れ使いやす出来る職人の普段使いの良い鉋だったようだ。

昔よく見た「土牛」、「鉄山人」「井本」の刻印。よく切れ使いやすい出来る職人の普段使いの鉋だったようだ。

 

表の研ぎ直しと片減りの修正

あと、やはり片減りしています。前に砥石の話というホームページ中の記事でも書きましたが、どうしても利き腕の側に力がはいるのか、研いでいくうちに、そちら側が減っていきます。この二寸の鉋の場合、裏から見て右側が、寸六の場合は逆に左側が減っています(左利きの職人が使っていたのでしょうか?)。これを、砥石の話 研ぎの実際2でも書いたように残っている側にグッと力を込めて研いで修正しています。加えて、大切れ刃といって刃先が鋭角になりすぎています。それを本格的に修正するには残された鋼が少なすぎます。刃先に力を入れて研ぎ、すこしづつ立てていきますが、とりあえずは針葉樹の仕上げ専用と割りきるしかありません。別の機会に触れたいと思いますが、大工の中にはこうして大切れ刃に一旦研いでから、刃先のみ仕上げ砥石で二段研ぎして杉を削る人もいます。

それと、裏を押すために叩くと、どうしても刃先線自体も歪んできます。そのためこうした大掛かりな裏の押し直しと、刃先の片減りなどの修正も含めた研ぎ直しは、交互に少しずつ進めていく必要があります。

片減りしていた向かって右側の端近くがまだ研げていない。

二寸の表側。片減りしていた向かって右側の端近くがまだ研げていない。

寸六の表側。裏だしのため叩いた痕がまだ残る。こちらは片減り修正で、左側にまだ砥石が当たっていない。

寸六の表側。裏だしのため叩いた痕がまだ残る。こちらは片減り修正で、左側にまだ砥石が当たっていない。

こうして一応裏も表も研ぎ直しました。しかし当初の目論見のように、鰹節削りに使うには大きすぎます。無駄に鉋身が大きいと重たいだけで、研ぎにくいし良いことはありません。それでは、普段使いの鉋にするには、寸六はもう鋼がもたないし、二寸の鉋は、不思議なもので寸八の鉋に比べて研ぎも台の調整も格段に難しくなります。それに、どちらも台に据えるにしても鉋身が短くなりすぎて市販されている荒台だと台の厚みに鉋が隠れてしまい使い勝手が悪い。鉋身が短くなって台との接触面が小さくなると仕込みを余程ちゃんとやらないと硬い広葉樹を削る場合、鉋身がビビったり、次第に台から刃が出すぎるようになります。でも、鉋自体は、良く切れそうです。仕上げ専用として短めの薄い台を自分で一から彫ってちゃんと仕込めたら、薄くて使いやすい粋な鉋になりそうです。

中古鉋に手を出して、とりあえずまともに使えるようにするには、事ほど左様に手がかるものなのです。安く手に入るからといって、素人は手を出さないほうが無難です。こうして手をかけて使える状態にする、そして使う、その事自体ににやけた満足感を持つことができないなら、やってられない世界だと思います。

徳島からお客さん、ダイアトーン・P-610 を聴く

15日(月)は、わざわざ徳島からお客さん。ダイアトーン・P-610のスピーカーボックス(エンクロージャー)を引き取りに来てくださった。事前のメールでタローのご指名があったので、ふだん連れていかない工房へ繋いでおいた。私が席を外している時に、そのお客さんがお見えになって、私より先に友だちになっていた。聞けば、同じような雑種犬を飼っていて、ブログの写真を見て是非会いたかったとの事でご指名となった。携帯に収まったその飼い犬(コジローだったか? 失礼、小太郎でした!あら、コタローだ・・・)の写真は、本当にタローとよく似た日本の雑種という風情の元気そうなヤツだった。

ダイアトーン・P-610 バスレフエンクロージャー。チェリー、クリの全て無垢板。

ダイアトーン・P-610 バスレフエンクロージャー。チェリー、クリの全て無垢板。この小さなユニットが良く鳴る!無垢板のエンクロージャーは、内部にほとんど吸音材を入れていないが、いやな音で振るえない。

私のホームページを見て注文を頂いたのだが、実は色々とほとんどニアミスとも言えるような共通の知人・友人がいる私より少し年長の方だと分かって、よく云われる事だが世の中は狭い。その分、基本的なものの考え方もお互い窺い知れて肩肘張らずに話せる。飼っている犬が同じ雑種だというのも嬉しい。ペット(ある意味友だち)をブランドで選ばないし、生き物をお金で贖うことをしないということだ。やはり前日の選挙結果のことは、もうニュースも見る気がしないとのこと。

オーディオの事も、オカルトめいた機器自慢ではなくて、基本自作派なので話は合う。作らせてもらったものと、私の普段使いの平面バッフル300Bシングルで暫し音楽を聴く。持って来られたBBキングは、圧倒的にP-610の方が快適だ。ベースの音もちゃんと聞こえる。10年あまり親しんだこの平面バッフルだが、もう一度P-610を使ったスピーカーを自分用に作ろうと思った。

木の仕事展IN東海2014 まとめ3 栃厨子

栃厨子

栃厨子

今回展示した栃厨子とちのずしは、すべて古材および手持ちの材で作りました。その内訳は以下のようなものです。

天板
30年ほど前京都に住んでいた頃、大型ゴミの中から見つけた板
側板
解体された昭和初期の大阪の民家の床の間の書院の板
戸・背板
数年前に岐阜の櫻井銘木さんで別の仕事のため買った板の余り
地板
工房齋の齋田さんを通して頂いた古い桐材

天板

この板については、以前書きました(「トチの古材 その1 削り出してみた」)。今回展示した厨子も、そもそも去年制作して展示するつもりで段取りしたのでした。もともと27ミリあった板が、去年の段階でムラ取りと厚み出しをして22ミリになっていました。そのまま1年置いてもほとんど捻れも反りも生じず、枯れ切っていることもありますが、いわゆる性の良い板であったことが分かります。

栃厨子の天板。30年ほど保管した板。端嵌めを施す。

栃厨子の天板。30年ほど保管した板。端嵌めを施す。

昨年のあの記事を書いた段階では、木裏に残った蟻桟の溝を彫り直して文机か座卓の天板にしようと考えていたのですが、もとの構想通り厨子の天板としました。それにあたって蟻桟の溝を埋め木することも考えたのですが、溝を完全に消えるまで削り出して15ミリ厚ほどにするのが見た目も美しい。それでもったいない、申し訳ないと思いつつ断行しました。結局、27→22→15ミリと元の材の半分近くをプレーナー屑、鉋屑としてしまったことになります。ただし、長さ方向、幅方向にはほぼ元の大きさを使いきっています。これに、留の端嵌めを付けます。端嵌めは、反り止め・木口の割れ止めとしての効果は高いし、蟻桟のように不用な出っ張りを生じないという大きな利点があります。ただし、もとの板の収縮との関係で微妙な問題が残ります。私は、板の幅が1尺(約30センチ)程度までのものか、ほぼ枯れ切った板の場合に限り使っています。端嵌めは、戸板でも使っていますが、これは少々問題がありました。これは別に書きます。

樹種についての疑問は、今回も残りました。微妙なひねりや反りを取り、傷を消すために鉋をかけました。同時に、半世紀以上も経った枯れ切ったトチ(側板)、櫻井さんの10年程のトチ(扉、背板)も削ります。トチはもともと柔らかい材ですが、これが枯れて古材となると固く締まってきます。櫻井さんの材でもかなり固くなっています。ところが、この少なくとも私の手元だけで30年ほども枯らした板は、しっとりとした柔らかさ、みずみずしさのようなものさえ保持しています。一鉋かけると適度に乾燥をかけた良質の針葉樹のような質感があります。樹種の特性なのか、あるいはトチだとすると個体差によるのか、やはりよくわかりません。そのあたり、同業者の人ならば、画像の鉋屑を見れば察してもらえるでしょう。

赤っぽい屑が天板。白い屑が戸板の栃

赤っぽい屑が天板。白い屑が戸板の栃

上が天板の屑、逆目を抑えるため裏を効かせているため縮緬状の屑になる。下は戸板のトチ。

上が天板の屑、逆目を抑えるため裏を効かせているので縮緬状の屑になる。下は戸板のトチ。

今回も、櫻井銘木の専務とそのご子息が来場下さいました。私は、滅多と櫻井さんで材料を買うことのない(つまり櫻井さんの材を使うような仕事のない)チンピラ木工屋ですが、この扉と背板は、御社で頂いたものです。と言うと、そうですねと覚えてくれています。それで、天板の樹種について上で書いたような疑問をあげた上で尋ねると、目を見るとトチだと思うが、確かに疑問の点もその通りで、断言しかねるとの事でした。櫻井さんに聞いて分からないのなら、これはもう諦めるしかありません。ちなみに櫻井専務は、もっと以前に買った霧島杉のことも覚えていらっしゃって何に使われましたかときかれた事がありました。さすがにプロです。

側板

側板。一旦割って接ぎ直している。

側板。一旦割って接ぎ直している。

この板は、大阪の古い民家(昭和最初期)を解体する時に頂いてきたものです。床の間の書院の側に使われていました。かなりひどく捻れ反っていました。これを幅方向と厚み方向にそれぞれ2分割(木口から見ると「田」の字に)して、それぞれ歪みを取って、幅方向に再度接ぎ直しました。もともと39ミリ程の板が、12ミリの板2枚となりました。歩留まりという面では、こんなものかと思います。

戸板

戸板など見付部分。戸板の上下に端嵌めを施す。

戸板など見付部分。戸板の上下に端嵌めを施す。

戸板というかそれを含む見附部分全体と背板は、6年前にある仕事のため櫻井銘木さんから購入した板のあまりを使っています。もともとかなりの量のトチの鏡板が必要で、櫻井さんに相談した所、6分か7分ほどに挽いた良い木味の綺麗な板をお持ちで、それを譲ってもらいました。この部分は、仕上がりが9ミリ程になりました。縦使いしています。戸板としてそのまま使うのは薄すぎるのと、反り止め・収縮止めを兼ねて上下に15ミリほどの厚みの端嵌めを入れています。框を組むように左右に同じトチで裏打ちしています。左右の戸はこすれる程ぎりぎりの寸法に削り合わせたのですが、ギャラリーに1日置いたら1ミリ弱程度の隙間が空いてしまいました。反りは押されられているのですが、端嵌めでは6年以上も枯らした板でも収縮を抑えることは出来ないのかと思いました。

丁番

サクラの透かし彫の丁番

サクラの透かし彫の丁番

丁番などの金物ですが、市販のものに正絹磨きをかけたり色々試してみたのですが、結局以前、若い金工作家に作ってもらったものを今回も採用しました。もう15年以上も前に、彼がまだ大阪の工芸高校に在学中に作ってもらったものです。こちらの厨子に使っています。細かいサクラの図案を、糸鋸で抜いた見事なものです。ただ、強度的な問題があって使う機会がなかったのです。

木の仕事展IN東海 まとめ2 色漆

今回は色漆を使った仕事をいくつか見て頂く予定でした。メインの朱塗りの大皿が、最後の乾燥の時に温度管理に失敗して黒く濁った様な色合いになり断念しました。

それで、ナラの刳り物の木口を布着せして黒漆を塗ったものと、乾漆もどきの2つをひっそりと出してみました。それぞれの経過は、こちらの記事にあります。

木口に布着せ黒漆を施したナラの刳り物。ほかは拭漆。

木口に布着せ黒漆を施したナラの刳り物。ほかは拭漆。

ナラの繰り物は、昨年のこの展示会で刳り物のサンプルとしてワークショップの所に置きました。それで四方反り鉋で、体験的に削ってもらったりしたものです。それを今年は仕上げてきました。干割れの入っていた木口に布着せをして黒漆を塗ります。刷毛塗りではどうしてもゴミと塗りムラが取れずに研いで誤魔化したのですが、同じ出展者で漆塗りの作品を展示していた南秀明さんに見てもらったところ、そうしたやり方もありとのお墨付きを頂きました。こうして木口を漆で固めると言うやり方は、先日の第66回正倉院展の赤漆履箱を見て大いに得心いたしました。今後、錆だけとか布着せまでやるとかその都度考えて、こうした器などの小物の他にも机の天板や箱物の角などで試していきたいと思います。

外側に朱漆を塗った乾漆の技法の器。

外側に朱漆を塗った乾漆の技法の器。

乾漆もどきの方は、先日の中根さんの作品を拝見した後では、乾漆と称するのも憚られるほどのものですが、これも南さんによると、ひとつの漆芸のあり方と考えれば良いと言われ、その気になってしまいました。

木の仕事展IN東海2014 まとめ1 ワークショップ

今回のワークショップでは、ノミと鋸を使ってホゾ穴とホゾを作ってもらい、それを組み上げます。予め突いておいた溝に塩ビシートを2枚差し込んで、そこに写真などを挟み込んでフォトフレームにするというものでした。難易度の高い作業に思えますが、墨の付け方と、鑿と鋸の使い方の基本さえ抑えれば誰でも出来きます。それでも、3日間で合計9人の方に参加してもらったのですが、作業の仕方や仕上がりに皆さんのそれぞれの個性が色濃くでて面白かったです。写真を撮れなかった人もいて申しわけないのですが、顔出しを了承してもらった人は、その満足気な充実した良い表情を見てもらうためにも、お顔を含めて掲載させて頂きます。また、それぞれお使いの材の葉をいれてもらっています。

完成したホゾ組みのフォトフレームに、サクラの紅葉を挟んで

30分で出来ると言いながら、2時間やっていただいた最初の人。でも良い出来で楽しんでもらいました。チェリー。

学校に通いながら仕事の修行もされている頑張り屋さん。ナラで強い印象の仕上がりでした。

学校に通いながら仕事の修行もされている頑張り屋さん。ナラで強い印象の仕上がりでした。

わざわざ東京から来て頂いたお客さま。カバで、江戸っ子風の勢のある仕事。講師は出展者の一人・若森さん。

わざわざ東京から来て頂いたお客さま。カバで、江戸っ子風の勢のある仕事。講師は出展者の一人・若森さん。

唯一の男性参加者で、プロを目指す。さすがにお上手でした。

唯一の男性参加者で、プロを目指す。さすがにお上手でした。ナラ。

出展者の一人・南部さんのお嬢さん。去年のショップに都合で参加出来ず一年越しに参加。門前の小僧の喩えの通り丁寧で見事な出来ばえ。クリ。

お二人とも大学の先生です。一人はわざわざ岡山から。二人そろうと普通のうるさいオバさんになる不思議。でも作業に入ると集中力はすごい・・・ナラとチェリー

出来ばえの良さは南部さんのお嬢さんと双璧の看護師さん。硬いナラに開けた穴と胴突き切断の綺麗さはお見事でした。

出来ばえの良さは南部さんのお嬢さんと双璧の看護師さん。硬いナラに開けた穴と胴突き切断の綺麗さはお見事でした。

上の人の3分の鑿で開けた穴です。

上の人の3分(9ミリ)の鑿で開けた穴と手鋸で刻んだホゾです。

木の仕事展IN東海2014 終了しました

今日は、午後から天気が崩れたのですが、それでもたくさんの方に来場いただきました。ありがとうございます。
遠方からもわざわざ来ていただいたお客さんには、本当にありがたく思います。

この東桜会館でのIN東海の展示も3回目で、齋田ボスの呼びかけと面倒な段取りの一手引受、都築木工房のコーヒー接待と並んで、私のDM制作と鳴り物係・ワークショップ担当というのもパターンとして定着してきたようにも思います。来年もまた齋田ボスが予定してくれています。マンネリと言われるまで我々50代後半隠居手前組が裏方とイベント担当をやって、若い人に作品制作に集中してもらうというのも、良い垂直分担の仕方かなと思います。

今回のワークショップは、一般の人には中身が濃すぎた気もしますし、1回2時間、それを3日間それぞれ3〜4回繰り返してさすがにくたびれました。それに肝心の接客と商品説明がついおろそかになりがちです。でも、今日も最後3時からきっちり5時前まで、出展者の矢野さんRed Hause Guitars)のお友達の看護師の人が参加されました。その作品の出来ばえがすばらしく、ご本人もたいへん満足されていました。最後に本当に良い笑顔で楽しかったあ〜!とか言われると、来年は何をやろうかと考えてしまいます。それに、今は突き板はもちろん塩ビシートを木だと思い込んでいる若い人が実際に増えているのです。それを単に嘆いているだけでなく、木それも我々が普段使用している家具材に触れてもらう、それに手作りと称するなら(私自身は自分の仕事に対しては、そうしたインチキで曖昧なコピーを絶対使いません)、手道具で木を切ったり削ったりして何か有用なものを実際に作ってもらうのは、長い目で見れば本当の木の良さを知ってもらい、ひいては私たちの顧客と理解者を作っていくことになるはずです。

最後に見事な作品を作ってもらいました

鉋かけ、良い姿勢です。最後に見事な作品を作ってもらいました。私にしたら看護師も先端かつ専門的知見をそなえた職人です。

こちらも教科書にしたいような縦挽きの姿勢

こちらも教科書にしたいような縦挽きの姿勢

搬出は雨の中。軽トラで搬入・搬出の他の出展者から「アクロバット」と称される貧乏木工屋にはつらい。三日目の様子などはまたあらためます。